金原瑞人さん×ひこ・田中さん×本のプロたちのヤング・アダルト・ブックトーク!(前編)

イベントレポート

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 2月10日(土)、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店にて『今すぐ読みたい! 10代のためのYAブックガイド150! 2』の刊行を記念したトークショー&サイン会が開催されました。

「YAブックガイド」シリーズは、10代(中高生)に薦めたい本150冊+αを徹底紹介したブックガイドです。数多くのYA(ヤングアダルト)英米文学を訳してきた翻訳家の金原瑞人さん、児童文学作家であり評論家でもあるひこ・田中さん監修のもと、お二人を含む27名の“本のプロ”が選書し、熱い紹介文を執筆しています。

 今回のイベントでは、金原瑞人さん、ひこ・田中さんに加えて、本書に寄稿した5名ががトークゲストとして登壇。レポート前編では二部構成のイベントから、金原さん、ひこさんが登場した第一部の模様をお届けします。おふたりはまず、本書のために選んだ本の中から、特にお薦めの1冊を紹介してくれました。

本選びは友達選びと同じ 相性のいい1冊を探してほしい

『シタとロット ふたりの秘密』アナ・ファン・プラーハ[著]西村書店
『シタとロット ふたりの秘密』アナ・ファン・プラーハ[著]西村書店

 ひこさんが選んだのは、オランダの作家アナ・ファン・プラーハの『シタとロット ふたりの秘密』(板屋嘉代子訳/西村書店)。スペインで暮らすオランダ人の少女シタとロットは、何をするにも一緒です。しかし、美しくて積極的なシタと、いつまでも夢見ていたいロットの関係は、次第に変化していき……。14歳という多感な時期を生きる少女たちの切実な物語を、ロットの視点でつづった1冊です。

 推薦の理由について、ひこさんは次のように話します。

「YA世代をひと言で表現すると“ジタバタ”だと思います。大人社会のことを考えてジタバタし、学校の友達付き合い、セックスや恋愛の問題でもジタバタする。そういう時代の人に向けた本が、YAです。シタとロットは、セックス、愛、友情などについてジタバタしながら、お互いに考え、悩み、語り合っていきます。しかし、解決には至りません。受け入れられることは受け入れるけれど、受け入れられないことは受け入れられないということを身につけていくのです。『日本でこれを書いたらダメ出しされるだろう』というところまで突っ込んで書いているのが面白くて。性や愛の衝動まで赤裸々に、そしてフラットに語られ、14歳の子たちの思いが言葉としてどんどん出てくるのがとてもいいなと思いました。YA世代にも大人にも読んでほしいですし、日本で小説を書こうとしている作家にもお薦めしたい作品です。『ここまで心の奥底、体の奥底を書いていいんだ』と思うのではないでしょうか」

『恋する寄生虫』三秋縋[著]KADOKAWA
『恋する寄生虫』三秋縋[著]KADOKAWA

 一方、金原さんが選んだのは、『恋する寄生虫』(三秋縋/メディアワークス文庫)です。書評家としても活躍する金原さんは、日ごろから多くの小説に触れています。そんな中で見つけたのが、この本だったそうです。

「三秋縋は、ライトノベル作家の中で、僕が今いちばん推している作家です。主人公は、重度の潔癖症で引きこもり。コンピュータの知識だけはある27歳の青年です。そんな彼が、不登校の女子高生と出会い、ひょんなことから両想いになります。でも、二人が惹かれ合ったのは、新種の寄生虫が及ぼす影響だった……というお話です。過去の症例を見ると、寄生虫を放っておいた人は全員自殺しています。でも、虫を駆除すると気持ちが変わってしまうかもしれません。さてどうする? という究極の選択を実にうまく書いていて、最後にもうひとひねりしているところが鮮やかなんです」

『狸の匣』マーサ・ナカムラ[著]思潮社
『狸の匣』マーサ・ナカムラ[著]思潮社

 また、今回のブックガイドには掲載されていませんが、マーサ・ナカムラの詩集『狸の匣』(思潮社)も激賞。光る才能をいち早く見つける、金原さんらしいセレクトでした。

 続いて「YAブックガイド」シリーズが生まれた経緯について聞かれると、「YA向けの本は目に入りにくく、書店や図書館も提案しづらいから」とひこさん。お二人のほかに25名もの選者をそろえた理由に関しては、金原さんが「二人で150冊も選ぶのは無理でしょう? 僕とひこさんが選んだ本だけでは二色弁当のようでおいしくなさそう」と冗談交じりに話してくれました。

 選書の条件は、過去7年間以内に刊行された本。それ以外は、特に制約を設けず選者のみなさんが自由に選んだそうです。25名の選者は5冊ずつ選び、お二人はさらに多くの本を選びました。

「よく誤解されるのですが、けっして『YAベスト150』ではありません。25名がそれぞれのベスト5を選び、『面白かったから読んで!』と情熱をもって紹介しています。いろいろな人が選んだほうが、面白い本に出会う確率も上がるのではないかと思います」とひこさん。金原さんもひこさんの意見に賛同し、次のように話しました。

「僕が教えている大学には、カウンセリングを行う学生相談室があります。社会心理学の先生に『いいカウンセラーとはどんな人ですか?』と聞いたところ、『それはいい友達ってどんな人ですか? と聞くのと同じことですよ』と返されたんです。要するに、相性がすべてなんですね。それを聞き、本と同じだなと思いました。いろいろな立場の27人が選べば、その中から相性のいい本が見つかるかもしれません。ちょうどいい人数ではないかと思いました」

 幅広い選択肢を提示し、読者の好みに合う1冊を探してもらう。そんな「YAブックガイド」シリーズの魅力を解説し、第一部は終了となりました。

【後編】につづく

野本由起(写真:ポプラ社児童書出版局)

ポプラ社
2018年5月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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