【手帖】ガラスの茶室の多彩な表情集めた写真集

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 京都市街を一望できる東山山頂の「将軍塚」(山科区)に、あの“清水の舞台”の約5倍の広さを持つ木造の大舞台が出現したのは3年前。天台宗門跡寺院の青蓮院(東山区)が、国宝「不動明王二童子像(青不動)」を安置する護摩堂「青龍殿」を、飛び地境内の将軍塚に建立したのにともなうもので、今では絶景を味わえる観光名所として人気を集めている。

 その大舞台に平成27年4月から今年9月上旬まで、「光庵」という名のガラスの茶室が展示されていた。作者はデザイナー、アーティストとして国際的に活躍する吉岡徳仁さん。茶室には花も掛け軸も飾られていないが、心を鎮めるうち、周囲の自然と一体化するような感覚が得られる。ガラスの床にはさざ波のようなきらめきが広がり、ある時間になると、天井から差し込む陽光とプリズムによって虹色の“光の花”が現れる。「光庵」は茶道の伝統の延長上にある茶室を意図したものではなく、光の中で、自然と一体化することで、日本文化の本質に近づこうとする試みだ。

 約2年半の展示期間中、光庵の多彩な表情が、スマートフォンなどの画像共有アプリ「インスタグラム」に数多く投稿された。季節や天候、時間帯、見る角度…一つとして同じように見えることはない。

 このほど求龍堂から刊行された写真集『吉岡徳仁 光庵-ガラスの茶室』(2600円+税)はプロの写真だけでなく、インスタグラム上の画像のうち、吉岡さん自身が特に魅了されたものを投稿者に確認のうえ、集めたもの。「その瞬間でないと捉えられない偶然の美がある。同時に、シャッターを切った人の思いや自然観も、写真に表れていると思う」と吉岡さんは語る。

 さらに11月2~13日には、東京都港区の「21_21デザインサイト(ギャラリー3)」で個展「吉岡徳仁 光とガラス」が開かれる予定。(黒沢綾子)

産経新聞
2017年10月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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