マイナスの改革、トランプ大統領は戦争バブルを狙っている
大統領就任から僅か1ヵ月の2017年2月、トランプ氏は軍事費の1割増額を公表。この歴史的増額は単純計算で6兆円にも及ぶ。この背景には、中東や北朝鮮との関係の悪化があるのは想像できるが、宮崎氏、佐藤氏は「トランプは何でも思いつきでやる」と見ており、この前提での議論が必要だという。
佐藤:トランプは何でも「オバマの反対」をやっていますよね。ここは単純だから行動が読みやすいですよ。でも、自分が関心を持ったら、何でもやりますから、これからも何が起こるかわからないですよ。
宮崎:そういう方向はずっと続くと思います。これは、何か戦略があってやっているわけではなくて、政治が何かをわかってないとか、権力というものをあまり知らない人たちが政権を取った時に、よくやる手法ですよね。
北朝鮮への空爆が日本に飛び火する事態が、さらに現実味を帯びてくる見方だが、宮崎氏は自身の経験から、トランプ氏にあるセンスを感じていた。そのセンスというのは、地上げ屋だ。
宮崎:佐藤さんの指摘通り、何も考えていないのはよくわかりますよね。いい人のわけはないけれど、昔の日本にもけっこういましたね。特に80年代のバブル期のバブル紳士とか、自分もやってたけど地上げ屋とかね、そういう人たちの感じに近い気がします。私は地上げ屋をやって、自分は金儲けのセンスがまったくないと気づきましたが、彼らは信念がまったくないのに、金儲けのセンスは抜群なんです。これからは、アメリカでも戦争によるミニバブルみたいなことは起こるでしょうね。アメリカは以前から戦争でしか経済を回せませんから。
佐藤:軍備と戦争は最大の消費ですからね。
トランプ氏は来日したとき、米国の戦闘機やミサイルなどの防衛装備品の日本への輸出に意欲を示したが、これは戦争バブルを起こすための序章なのかもしれない。トランプ氏の正体が「戦争バブル紳士」であるなら、暴走は避けられないのかもしれない。ただ、バブルはいつか弾ける運命にある。このことについてお二人はトランプ氏の思惑を「マイナスの改革」と結論づけている。
SB新書『「暴走する」世界の正体』では、ほかにも現代日本、革命の可能性、沖縄問題などを取り上げ、お二人の見方の違いによる知的格闘技が展開されている。読み進めていけば、狂気に駆られた真の世界の正体が見えてくるはずだ。
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