第158回の芥川賞に石井遊佳さん「百年泥」、若竹千佐子さん「おらおらでひとりいぐも」、直木賞に門井慶喜さん「銀河鉄道の父」

文学賞・賞

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 第158回芥川龍之介賞、直木三十五賞の選考会が1月16日、築地・新喜楽にて行われ、芥川賞に石井遊佳さん(53)の「百年泥」(新潮 11月号)と若竹千佐子さん(63)の「おらおらでひとりいぐも」(文藝 冬号)が、直木賞に門井慶喜さん(47)の『銀河鉄道の父』(講談社)が選ばれた。石井さんと若竹さんは初候補で受賞、門井さんは3度目の直木賞候補での受賞となった。

左から芥川賞を受賞した石井遊佳「百年泥」、若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」、直木賞を受賞した門井慶喜『銀河鉄道の父』
左から芥川賞を受賞した石井遊佳「百年泥」、若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」、直木賞を受賞した門井慶喜『銀河鉄道の父』

 石井遊佳さんは1963年大阪府枚方市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科インド哲学仏教学博士課程満期退学。日本語教師。2017年に「百年泥」で第49回新潮新人賞を受賞。現在、インド、タミルナードゥ州チェンナイ市在住。

「百年泥」は、自分の意思に反してインド・チェンナイで日本語教師をすることになった女性が、現地で百年に一度という大洪水に見舞われ、川の濁流に押し流され堆積した泥から現れた品々にまつわる出来事を描いた一作。

 若竹千佐子さんは1954年岩手県遠野市生まれ。岩手大学教育学部卒業。現在、主婦。2017年「おらおらでひとりいぐも」で第54回文藝賞を受賞しデビュー。63歳での受賞は同賞史上最年長となる。

「おらおらでひとりいぐも」は、20代で田舎から上京し、結婚、出産、子育て、そして夫との死別を経て、現在ひとり暮らしをする74歳の桃子さんを主人公に、「老いの境地」を描いた一作。

 英文学者で翻訳家の小山太一さんは、「百年泥」を「すべては『あったかもしれない人生』の綴れ織りだという諦念がとぼけたユーモアと入り混じり、独特の味を生んでいる」と評し、「おらおらでひとりいぐも」を「田舎から出てきて結婚と子育て、今は首都圏の郊外に一人暮らし、という桃子さんの人生はごく平凡だ。しかし、その来し方が『最古層のおら』の東北弁で掘り起こされるとき、地底のマグマを思わせる『ふつふつとたぎるもの』が立ち現れてくる」(週刊新潮 2017年11月2日号)と解説している。
https://www.bookbang.jp/review/article/540962

 直木賞を受賞した門井慶喜さんは1971年群馬県桐生市生まれ。栃木県宇都宮市出身。1994年同志社大学文学部文化学科文化史学専攻(日本史)卒業。2003年「キッドナッパーズ」で第42回オール讀物推理小説新人賞受賞。2006年『天才たちの値段』で単行本デビュー。2016年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)受賞、同年第34回咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞している。

『銀河鉄道の父』は、信仰への目覚めや最愛の妹トシとの死別など、紆余曲折に満ちた宮沢賢治の生涯を父・政次郎の視点から描いた一作。

 国際政治学者の三浦瑠麗さんは「本書には愛する者を失うというモチーフが随所で顔を出す。(中略)小さきもの、失われたものに対するあふれでんばかりの賢治の愛は、父、政次郎のもつ愛と同じものだった、と思う」(読売新聞)と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/541732

 芥川賞・直木賞はどちらも昭和10年に制定。芥川賞は新聞・雑誌に発表された純文学短編作品が対象。主に新人作家に与えられる。直木賞は新聞・雑誌、単行本で発表された短篇および長編の大衆文学作品を対象に優秀作を選定。主に新進・中堅作家が対象。

候補作は以下のとおり。

■第158回芥川龍之介賞 候補作(掲載誌)
石井遊佳「百年泥」(新潮 11月号)
木村紅美「雪子さんの足音」(群像 9月号)
前田司郎「愛が挟み撃ち」(文學界 12月号)
宮内悠介「ディレイ・エフェクト」(たべるのがおそい vol.4)
若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」(文藝 冬号)

■第158回直木三十五賞 候補作(出版社)
彩瀬まる『くちなし』(文藝春秋)
伊吹有喜『彼方の友へ』(実業之日本社)
門井慶喜『銀河鉄道の父』(講談社)
澤田瞳子『火定』(PHP研究所)
藤崎彩織『ふたご』(文藝春秋)

Book Bang編集部
2018年1月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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