第20回大藪春彦賞が決定 呉勝浩『白い衝動』と佐藤究『Ank: a mirroring ape』が2作同時受賞

文学賞・賞

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 第20回大藪春彦賞の選考会が22日、東京・新橋の第一ホテル東京にて行われ、呉勝浩さんの『白い衝動』(講談社)と佐藤究さんの『Ank: a mirroring ape』(講談社)の受賞が発表された。

 受賞作の『白い衝動』は、犯罪加害者との共存をテーマにしたミステリー小説。スクールカウンセラーとして働く心理学者の奥貫千早は、殺人衝動を抱える高校1年の野津秋成のカウンセリングを始めるが、町内に連続一家監禁事件を起こした入壱要が暮らしていることがわかり、衝撃の結末へと展開していく。

 雑誌メディアを中心に書評や作家インタビューを行うライターの吉田大助さんは、「千早の内部には、理想主義者と現実主義者が、この人にしかありえない仕方で火花を散らしている。その視点にシンクロしながら読み進めていった先で、本格ミステリとしてのギアが一気に上がる」と同作について触れ、「そして、物語の謎がすべて解き明かされた瞬間、大きな問いが胸に飛び込んでくる」(小説新潮・書評欄)と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/526894

 呉勝浩さんは、1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。現在、大阪府大阪市在住。2015年に『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。著書に『ロスト』『蜃気楼の犬』『ライオン・ブルー』がある。

 もう一つの受賞作『Ank: a mirroring ape』は、AI研究から転身した世界的天才ダニエル・キュイが創設した霊長類研究施設「京都ムーンウォッチャーズ・プロジェクト」でセンター長を務める鈴木望が、2026年に京都で多数の死者を出した暴動の発端となった一頭の類人猿「アンク(鏡)」の謎に迫るパニックスリラー。

 書評家の村上貴史さんは、「様々な視点の様々なテキストによるパッチワークというスタイルを採りつつ、主人公像は明確で、彼の熱意や苦悩がしっかり描き出されている」と筆力の高さを評価すると共に、同作の謎解きの壮大さについて「ロジックが刺激に富み、かつロジックを超越した“なにか”の存在も感じさせる」(小説新潮・書評欄)と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/538594

 佐藤究さんは、1977年福岡県生まれ。2004年に佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となり、デビュー。2016年に犬胤究名義の『QJKJQ』が第62回江戸川乱歩賞を受賞し、筆名を佐藤究に改名する。

 大藪春彦賞は、作家・大藪春彦の業績を記念して創設された文学賞。主にハードボイルド小説・冒険小説に分類される小説を対象とし、優れた物語世界の精神を継承する新進気鋭の作家及び作品に、毎年、授与される。第20回の選考委員は、大沢在昌、黒川博行、藤田宜永が担当した。

 昨年は、関東大震災後の東京を舞台に帝国陸軍に追われる女性諜報員の活躍を描いた長浦京さんの『リボルバー・リリー』が受賞。過去には馳星周さんの『漂流街』(第1回)、福井晴敏さんの『亡国のイージス』(第2回)、近藤史恵さんの『サクリファイス』(第10回)などが受賞している。

 第20回の候補作品は以下のとおり。
『痣』伊岡瞬[著]徳間書店
『カミカゼの邦』神野オキナ[著]徳間書店
『白い衝動』呉勝浩[著]講談社
『Ank: a mirroring ape』佐藤究[著]講談社
『地獄の犬たち』深町秋生[著]KADOKAWA

Book Bang編集部
2018年1月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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