京大院生が「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト50

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 現役の京大院生、かつ京都天狼院書店で働く文学マニアの女子大生・三宅香帆が本を紹介するブックガイド『人生を狂わす名著50』に掲載された選書リストが全文公開された。

『人生を狂わす名著50』は、2016年「はてなブックマーク数年間第2位」となり大きな話題を呼び、2017年に書籍化されたブックガイド。現役の京大院生が外国文学から日本文学、漫画、人文書まで人生を狂わされる本として選んだ50冊が掲載。ひとつひとつに紹介文と共に「文学研究」の視点で、50冊それぞれに「その次」に読みたい本を3冊ずつ紹介している。

 京大院生が選んだ、「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う名著ベスト50は、スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』や川端康成『眠れる美女』、中島梓『コミュニケーション不全症候群』、米原万里『オリガ・モリソヴナの反語法』、昨年ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』などが選書されている。

 著者の三宅香帆は、高知県出身、1994年生まれ。京都大学大学院人間環境学研究科に在籍中の大学院生。その一方、天狼院書店(京都天狼院)のオープニングスタッフとして採用され、現在も働いている。大学院での研究領域は国文学で、テーマは「万葉集における歌物語の萌芽」。一語一語を解釈して精読することによって歌や物語をちゃんと読めるようになることが現在の目標。卒業後は博士課程進学予定。

京大院生が選んだ、「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う名著ベスト50

1/50『高慢と偏見』ジェイン・オースティン
――人生の「笑い飛ばし方」がわからなくなったあなたへ
世界でいちばんおもしろい古典小説。実は、月9ドラマも今時放映しないくらいベタベタなラブ・コメディなんです。

2/50『フラニーとズーイ』J.D.サリンジャー
――世に溢れかえる承認欲求にうんざりしているあなたへ
止まらない自己愛や承認欲求との距離の取り方を教えてくれる、アメリカ大学生の青春文学。

3/50『眠り(『TVピープル』所収)』村上春樹
――村上春樹をまだ読んでいないあなたへ
世界の村上ブンガクの傑作短編。(私のように)なかなかほかの村上春樹作品を受けつけなかった人におすすめです!

4/50『図書館戦争』有川浩
――新しい仕事や新生活を始めた「新人」さんへ
「組織としての正義」と「矛盾に葛藤しながら戦う主人公」。読むたびに励まされ、背筋の伸びる最高のエンタメ小説!

5/50『オリガ・モリソヴナの反語法』米原万里
――「語られない歴史」が好きなあなたへ
私が「全人類」におすすめする本を挙げるとしたら、この本を挙げる。「歴史」と「文学」の間にある傑作です!

6/50『スティル・ライフ』池澤夏樹
――都会とか現代とか、「忙しさ」にちょっと疲れたあなたへ
透明感ってこういうことか。精神的な何かのチューニングをするために、「文章」で「自然」と出会うことのできる物語

7/50『人間の大地』サン=テグジュペリ
――手の届きそうにない何かに出会ったことがあるあなたへ
あなたの人生を狂わすほどの「憧れ」に出会う一冊。命よりも大事な何かに取り憑かれてしまった人が見た景色とは。

8/50『グレート・ギャツビー』スコット・フィッツジェラルド
――この世のロマンチストな男の人全員へ
憧れは手にした途端消えてしまう。それでも……。全世界の男のロマンを結晶させたアメリカ文学史にかがやく華麗なる一冊。

9/50『愛という病』中村うさぎ
――「女という性」がよくわからなくなってきたあなたへ
ホスト狂い、整形、デリヘル嬢……女という動物の欲望の謎を中村うさぎの壮絶な実体験から知ることができる一冊。

10/50『眠れる美女』川端康成
――自分の変態度をグレードアップしたいあなたへ
日本屈指の変態作家といえば川端康成でしょ! ノーベル賞作家の描く美少女の官能っぷりは最高です。

11/50『月と六ペンス』サマセット・モーム
――小説家や画家に頭が上がらないと思っているあなたへ
絵に取り憑かれた画家の一生を通して、「芸術」の魔力を描いた一冊。鑑賞者ってつくづく楽だ……とか思っていたら殴られてしまう。

12/50『イメージを読む』若桑みどり
――旅行に行っても美術館をちっとも楽しめないあなたへ
モナリザの秘密やルネサンスの謎。絵は見るだけじゃなく、読めるものなんだ! と教えてくれる美術史入門。

13/50『やさしい訴え』小川洋子
――静かに感情の波に飲み込まれたいあなたへ
眠れない夜には小川洋子。小説独特の「艶」というものを知る、静謐で美しい恋愛小説。

14/50『美しい星』三島由紀夫
――本気の美しさを見たいあなたへ
日本史上もっともロマンチストだった作家・三島由紀夫による究極の人間賛歌。

15/50『死の棘』島尾敏雄
――結婚前(後)に夫婦の真髄を知りたいあなたへ
元祖メンヘラ女性小説。620ページ、妻がひたすら病んでいる夫婦文学でございます。結婚に夢を持っている人は、読んではいけない。

16/50『ヴィヨンの妻』太宰治
――太宰治の言葉に殺されたい人へ
日本文学史上最高にキャッチーな「太宰の殺し文句」で、男のクズさと女の冷たさを楽しむ短編小説。

17/50『悪童日記』アゴタ・クリストフ
――残酷でタフな世界を生きる小さいあなたへ
子どもは純粋無垢なんて思うと痛い目見ます。たったふたりで世界を生きた、この世でいちばん残酷でクールな双子の物語。

18/50『そして五人がいなくなる』はやみねかおる
――「本」のおもしろさをまだ知らない子どもたちへ
子どもたちを「本好き」という夢の世界へ狂わせ続ける、名探偵夢水清志郎事件シリーズ。

19/50『クローディアの秘密』E.L.カニグズバーグ
――冒険じゃない冒険を求めている、自称子どもたちへ
家出先が「メトロポリタン美術館」。大人が読んでもおもしろい、素敵で都会的な秘密の家出物語。

20/50『ぼくは勉強ができない』山田詠美
――カッコわるい大人にはなりたくないあなたへ
不良じゃなくても、優等生じゃなくても、そのどちらでもない自分でも、社会で「自由」でいられる方法を教えてくれる青春小説!

21/50『おとなの進路教室。』山田ズーニー
――大人になっても、「これから」に迷っているあなたへ
ビジネス書でも自己啓発でもない。だけど、選択、就職、進学……悩んだとき「自分の意志に逆らわない勇気」をくれる一冊。

22/50『初心者のための「文学」』大塚英志
――教科書に載っている文学作品って何がおもしろいの? と思うあなたへ
三島由紀夫や太宰治をどうしても読む気が起こらない人に、「読み方」を教えてくれる、文学のおもしろ取扱説明書。

23/50『妊娠小説』斎藤美奈子
――新しい読書ジャンルを開拓したいあなたへ
文学の読み方が変わるっ。高尚なはずの森鴎外や島崎藤村の小説がゲラゲラ笑けてきてしまう文学批評本。

24/50『人間の建設』小林秀雄・岡潔
――「難しい話」に背伸びしてみたいあなたへ
知の巨人たちが語る「日本史上もっとも知的な雑談」。文系と理系はわかり合えるのだろうか? 教養とは何か知りたい人、ぜひ。

25/50『時間の比較社会学』真木悠介
――生きるとか死ぬとかってけっこう虚しいよなぁと思う人へ
時間を相対化するという挑戦から、誰もが抱える「どうせ死ぬんだから意味ないじゃん」という虚しさに対抗した労作。

26/50『コミュニケーション不全症候群』中島梓
――社会に適合するのってむずかしいと思うあなたへ
「90年代」以降の少年少女の生き様を書き下した評論。自分を傷つける方法と、楽にする方法を同時に学べる一冊。

27/50『枠組み外しの旅「個性化」が変える福祉社会』竹端寛
――どうせ変わりっこない、なんてほんとは思いたくないあなたへ
「しゃーない」って諦めてしまうところをきちんと「越えて」いく元気が出る学術書

28/50『燃えよ剣』司馬遼太郎
――理想の「生き様」や「美学」を探している青少年たちへ!
「カッコよさ」の定義が狂わされる、問答無用にカッコいい歴史小説。土方歳三は負けてもなお、カッコいい。

29/50『堕落論』坂口安吾
――「まともさ」や「綺麗事」に違和感を覚えるあなたへ
不況になると「坂口安吾」が流行るらしい。すぐに「堕ちて」しまう人間の性を、じゃあどうするかって本です。

30/50『アウトサイダー』コリン・ウィルソン
――人生に意味なんてないのでは……と絶望しはじめたあなたへ
どうしたら人は「日常の退屈」に負けずに生きられるのか? そんな疑問に文学を通して答える、とにかく死ぬほどおもしろい本。

31/50『ものぐさ精神分析』岸田秀
――社会の幻想がつまらなく思えてきたあなたへ
夢とか自己実現とか、そういう「まやかし」に惑わされないために読みたい一冊。歴史的名言に出会ってください。

32/50『夜中の薔薇』向田邦子
――「言い過ぎてしまう自分」がいつも恥ずかしいあなたへ
名脚本家による名エッセイ。古いのに新しい、優しいのに厳しい、黙っているのに声が聴こえてくる一冊。

33/50『東京を生きる』雨宮まみ
――東京は自分の居場所だと思いたい、思えないあなたへ
地方出身者である作者が「東京」への欲望を語る一冊。私はこれを読んで東京に住みたくなくなった。あなたはどうだろうか?

34/50『すてきなひとりぼっち』谷川俊太郎
――詩の世界に触れてみたいって思い始めたあなたへ
誰もが知る詩人・谷川俊太郎の誰も知らないベスト・アルバム詩集。私たちがふだん使っている言葉と同じ言葉なのに、どうしてこんなふうに扱えるのだろう。

35/50『チョコレート語訳みだれ髪』俵万智、与謝野晶子
――日本語のおもしろさを知りたいあなたへ
明治時代の与謝野晶子の歌を、俵万智が現代語訳! 明日から自分の口からこぼれる言葉を大切に選びたくなる一冊。

36/50『ぼおるぺん古事記』こうの史代
――日本の神話をいつか読んでみたいと思っていたあなたへ
原文そのままなのに古事記が理解できちゃう!? 日本で今いちばんすごい漫画! ぶっ飛んでキャラ立ちまくりな神様たちの物語です。

37/50『百日紅』杉浦日向子
――今まで読んだことのない漫画を読んでみたいあなたへ
浮世絵風の絵に注目。江戸の街を舞台に、幻想と日常をうつしだす美しさの価値観が変わる一冊。

38/50『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は二度跳ねる』水城せとな
――大人になってから恋を「してしまった」あなたへ
ふだんBLや少女漫画を読まない人にもおすすめしたい。Amazonの口コミ評価が異様に高く熱量がすごいので、ぜひご覧くださいませ(笑)

39/50『二日月(山岸凉子スペシャルセレクション8)』山岸凉子
――少女漫画の深淵を覗きたいあなたへ
私はこれを読んで、世界に物語が必要な理由がわかった。読めば人生観が覆される、「人間の業」を見つめた少女漫画。

40/50『イグアナの娘』萩尾望都
――消せないコンプレックスを持つ女へ
イグアナの顔をした母娘の間に生まれる「憎悪」から、自分との向き合い方を50ページで見事に描き切った短編漫画。

41/50『氷点』三浦綾子
――「愛」って何か、ずっと知りたかったあなたへ
「一生、家族を殺した犯人を憎まずに生きられるか」というよくあるテーマ。だけど、これ以上掘り下げた作品をほかに知らない。

42/50『約束された場所で』村上春樹
――日本の、いや「私たち」の闇について知りたいあなたへ
村上春樹によるオウム真理教信者へのインタビュー集。「彼ら」と「自分」の「違いのなさ」に衝撃を受ける一冊。

43/50『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ
――恋愛で「重すぎる」「軽すぎる」自分に嫌気がさしたあなたへ
人生に求めるのは軽さか? 重さか? 「プラハの春」を舞台にした哲学的恋愛小説。

44/50『春にして君を離れ』アガサ・クリスティー
――自分の「間違い」を認めることが苦手なあなたへ
アガサ・クリスティーの「ミステリじゃない」小説。正しさは人を傷つけ得る、ということを描いた名作。読むと背筋の凍ることうけおい。

45/50『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ
――本当は、自分に正直に生きていきたいあなたへ
ニューヨーク、恋心、まるで猫みたいな美女。イノセンスの思い出をめぐる、きらきらと切ない小説。

46/50『光の帝国――常野物語』恩田陸
――「善き物語」に触れたいあなたへ
目を向けると心が荒むことばっかりで、こういう「善き人々」が存在すると信じさせてくれるだけでも価値あるよなって思う小説。

47/50『なんて素敵にジャパネスク』氷室冴子
――本を読んで、とにかく元気になりたいあなたへ
少女小説の原点であり、永遠に女の子の味方。ラノベの開祖みたいなものです。傑作平安時代ラブ・コメディ!!

48/50『恋する伊勢物語』俵万智
――古典をもっとおもしろく読みたいあなたへ
私の人生を変える恋のきっかけになった一冊です! 古典なのに、不倫ありナンパあり格差婚ありの恋愛パターン詰め込み集。

49/50『こころ』夏目漱石
――自分って実はめっちゃワガママな人間なのでは……と思い始めたあなたへ
日本文学史上もっとも読者を狂わせる、人間の孤独の冷たさを完璧に綴った傑作。教科書で読んだよって方も、ぜひもう一度。

50/50『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ
――この世でいちばん切ない小説を読みたいあなたへ
とりあえず私が今この世界でいちばんの傑作だと思う小説です! 読んで!! 今の時代、「善」とされない方向へ傾きます。

2018年1月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです
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