なぜジャパネットは社長交代後も高成長を続けるのか?

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「日本一有名な社長」ともいわれたジャパネット創業者の髙田明氏。2015年1月に社長の座を長男の旭人氏に譲り、翌年1月にはテレビショッピングのMC(話し手)からも引退、経営からも完全に退いた。カリスマ通販王、髙田氏の引退は「経営リスク」とささやかれたが、同社の16年12月期の連結売上高は前期比14%増の1783億円で過去最高を更新、今期も増収増益を見込んでいる。一線からリタイアした髙田氏だが、地元長崎のサッカーチーム「Ⅴ・ファーレン長崎」の社長に就任。1年目にしてチームをJ1に昇格させ、依然としてその手腕を発揮し続けている。新刊『まかせる力』(SB新書)では、髙田氏が経営の指針とし、社員向けの講演や指導を依頼するほど影響力を受けた国際ビジネスブレイン社長で、日本コカ・コーラやジョンソン・エンド・ジョンソンなどの経営にも携わった新将命氏と対談。髙田氏が拠り所にしていた新氏の名著『経営の教科書』をベースに、「まかせる」ことの大切さを語り合っている。そのエッセンスを見ていこう。

経営者の最大の美学は「引き際」

 後継者の育て方や事業継承について新氏は、まず経営者が意識しなければならない最大の美学は「引き際」だという(以下、髙田氏と新氏の発言は、すべてSB新書『まかせる力』からの引用。敬称略)。


通販事業を年商1700億円に育て事業承継した髙田明氏。昨年はV・ファーレン長崎を経営再建、社長就任1年目で見事J1昇格を果たし話題を呼んだ(撮影:辻聡)

髙田:法人会や商工会などの招きで地方に講演に行っても、事業承継については皆さん、大変関心が高いと感じます。規模の大小や業種・業態を問わずに。それだけ、後継者探しや育成が大変なのでしょうね。

新:「人がいない、育っていない」という声も聞きますが、真実ではない。人を探していないし育てていないだけです。やや極端に言いますが「70 歳まで社長をやっている」という人やその会社を信頼できません。裏を返せば、その年まで後継者を育てられなかったということの証しでもあるから。

髙田:私自身は66歳で社長業から完全に引退したわけですから、ぎりぎりでセーフというところですね。

新:髙田さんの引き際が見事だったのは、承継そのものもですが、会長や顧問、相談役といった肩書で院政を敷かなかったことです。近年、世間を騒がせている大企業を見ればよくわかることですが、現役社長の上に70代の会長、80代の顧問や相談役がいたりして、個室に秘書、専用車を与えられている。実質、会社にほとんど貢献していなくても居心地がいい。だから、かつての取締役がそういうポストを手放さない。結果、責任の所在も指揮系統も分散し、現場はしらけムード。そうした風習は、いい加減やめなければなりません。私自身は、取締役以外の肩書は残さず、相談役や顧問はすべて退任すべきと思っています。最近になって、ようやくそういう気配が出てきたのは喜ばしいことだと思っているのです。

 髙田氏は新氏の指摘に頷き、続けて「後継者探し・育成」がどれほどのウエイトを占めるのかを質問。新氏は「少なくとも半分以上を占める大事な仕事」と答えているが、これは自身が社長時代にいわれたことだという。

新:ジョンソン・エンド・ジョンソンの社長に就任した40代半ばの時、アメリカ本社の社長から「あなたがいつか社長を辞める時、もし後継者が育っていなければ、あなたへの評価は、最大でも50点だ」と言われました。

髙田:いくら業績を上げても、ブランド価値を向上させても、顧客満足や社員満足を高めても、それだけでは50点でしかない、ということですか。

新:ええ。大学にせよ企業の入社試験にせよ、通常は合格ラインというのは60点くらいですね。ということは、社長が「合格点」を取るためには、後継者の育成がマストということになります。逆に言えば、いくら業績を上げても、後継者を育てることができない社長は、社長失格なのです。

髙田:100年続く企業を考えた時、私自身も60代でそうした考えを漠然と抱いていました。幸い、元気なうちに承継を済ませることができた。

 この話から、いかに経営者の後継者探し・育成が大切で、引き際を間違えると大変ということがうかがえる。ひいては「まかせる力」が重要視されていることも伝わってくる。

SBクリエイティブ
2018年2月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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