【話題の本】『大遺言』永拓実著

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 ■読み返したくなる“永語録”

 おそらく、平成6年のベストセラー『大往生』を意識しているのだろう。放送作家をはじめ、幅広く活躍した永六輔さんが生前残した言葉をまとめた“永語録”だ。

 著者の永拓実さん(21)は永さんの孫。黒柳徹子さんらゆかりの約30人に取材し、永さんの言葉や逸話を引き出した。担当編集者によると、昨夏の刊行後版を重ね、今も売れ続けているという。

 永さんの言葉に共通するのは「分かりやすさ」だ。難しそうな言葉を、柔らかく教えてくれる。例えば、般若心経などにある「色即是空(しきそくぜくう)」。永さんは「ドーナツの穴」と表現したうえで、「ないけどある。あるけどない」と続ける。うまいな、としみじみ思う。

 それなのに、不思議と“重み”もある。「人間関係に順位をつけない。損得を考えずに人と付き合おう」という言葉も、言うだけなら誰でも言える。それが、ファンからの全てのはがきに返事を書き、多くの人に慕われた永さんの言葉だと思うと、すっと納得できる。

 単に「命に感謝しましょう」と言うのではなく、「自分の歳に(最初の生命が誕生したとされる)36億(年)を足しましょう」と語りかけた逸話もいい。折を見て読み返したくなる本だ。(小学館・900円+税)

 本間英士

産経新聞
2018年2月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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