瀬戸内寂聴「最後の長編小説」に横尾忠則も「なんとけばけばしい業の美意識よ」と嘆息

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 2月14日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、単行本 文芸書第1位は『おらおらでひとりいぐも』が獲得した。
 第2位は『銀河鉄道の父』。第3位は『いのち』となった。

 3位となった『いのち』は瀬戸内寂聴さんの「最後の長編小説」。9日放送のNHK「あさイチ」に瀬戸内さんが出演し、大きな話題に。同作のなかで瀬戸内さんは自身のこれまでの人生を振り返りつつ、親友だった2人の女流作家もとりあげ、3人それぞれの壮絶で業の深い生き様が描かれている。

 画家の横尾忠則さんは『いのち』を《三人三様の女性作家の俗界の魔境の深奥で男と女の愛憎の沸騰する河底を渦巻く濁流の情念の土石流に、あゝなんとけばけばしい業の美意識よ、とかなんとか意味不明の言葉しか浮かばないもどかしさにただただ嘆息するしかない。》(朝日新聞1月28日掲載書評より)と独特の表現で評している。

 出版元の講談社は「最後の長編小説」としているが、瀬戸内さんはインタビューでまだ書きたいものが「一つあるんです。家族のことを書いていないんですよ。」(朝日新聞デジタル12月8日掲載インタビュー)と執筆に意欲をみせている。

1位『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子[著](河出書房新社)

結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――(河出書房新社ウェブサイトより抜粋)

2位『銀河鉄道の父』門井慶喜[著](講談社)

明治29年(1896年)、岩手県花巻に生まれた宮沢賢治は、昭和8年(1933年)に亡くなるまで、主に東京と花巻を行き来しながら多数の詩や童話を創作した。賢治の生家は祖父の代から富裕な質屋であり、長男である彼は本来なら家を継ぐ立場だが、賢治は学問の道を進み、後には教師や技師として地元に貢献しながら、創作に情熱を注ぎ続けた。地元の名士であり、熱心な浄土真宗信者でもあった賢治の父・政次郎は、このユニークな息子をいかに育て上げたのか。父の信念とは異なる信仰への目覚めや最愛の妹トシとの死別など、決して長くはないが紆余曲折に満ちた宮沢賢治の生涯を、父・政次郎の視点から描く、気鋭作家の意欲作。(講談社ウェブサイトより)

3位『いのち』瀬戸内寂聴[著](講談社)

大病を乗り越え、命の火を燃やして書き上げた、95歳、最後の長篇小説。ガンの摘出手術と長い入院生活を終えた私は、秘書のモナに付き添われ、寝たきりのままで退院した。収まらない痛みに耐える日々、脳裏に甦るのは、これまでの人生で出会った男たち、そして筆を競った友の「死に様」だった――。ただ一筋に小説への愛と修羅を生きた女の、鮮烈な「いのち」を描き尽くす、渾身の感動作。(講談社ウェブサイトより)

4位『屍人荘の殺人』今村昌弘[著](東京創元社)

5位『コーヒーが冷めないうちに』川口俊和[著](サンマーク出版)

6位『百年泥』石井遊佳[著](新潮社)

7位『棲月 隠蔽捜査(7)』今野敏[著](新潮社)

8位『西郷どん! 並製版(上・中・下)』林真理子[著](KADOKAWA)

9位『かがみの孤城』辻村深月[著](ポプラ社)

10位『掟上今日子の色見本』西尾維新[著](講談社)

〈単行本 文芸書ランキング 2月14日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2018年2月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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