【手帖】建築業界にも“働き方改革”の波

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    子育てしながら建築を仕事にする
    成瀬 友梨  著、編集/三井 祐介  著/萬玉 直子  著/杉野 勇太  著/アリソン 理恵  著/豊田 啓介  著/馬場 祥子  著/勝岡 裕貴  著/鈴木 悠子  著/木下 洋介  著/永山 祐子  著/瀬山 真樹夫  著/杤尾 直也  著/矢野 香里  著/松島 潤平  著/吉川 史子  著
    価格:2,200円(税込)

 長時間労働のイメージが強い建築業界でも、ワークライフバランスを重んじる改革が進んでいる。『子育てしながら建築を仕事にする』(学芸出版社・2000円+税)は、男女16人の体験をまとめた実例集。ゼネコン、ハウスメーカー、大手から個人の設計事務所まで、立場や仕事内容はさまざまだ。

 このうち編著者の成瀬友梨さんも、子育てしながら建築設計事務所を共同主宰し、さらに昨年まで東大工学部建築学科で助教として指導してきた。そのとき女子学生から「建築の仕事をしながら、子供を育てる将来が想像できない」とよく相談を受けたことが、この本を企画するきっかけになったという。もちろん、仕事と子育ての両立に苦闘しているのは女性だけではない。結果的に男女8人ずつの構成になった。

 大手の総合設計事務所、日建設計で働く三井祐介さんによると、同社は昨年「時間デザイン制度」を導入したという。「働く時間」だけでなく、社外のシェアオフィスや在宅勤務など「働く場所」も自分でデザインできる制度で、同僚やプロジェクトチームで互いのスケジュールや役割を把握しながら、仕事と介護、子育てとの両立をはかっているそうだ。

 夫婦共働きの三井さんにとって、子育てはあたりまえの日常。育児への“参加”を暗に前提としている「イクメン」という言葉には違和感があるという。入社当時は子供のお迎えで帰る男性社員はいなかったそうだが、「お先に~」と早めに帰る父親たちを見て、これからの若い世代はそれが普通だと思うだろうとみる。

 16人のケースには、時間のやりくりや急な子供の病気への対応、キャリアの選択など、建築に限らず他の業界にもあてはまる悩みが多く登場する。そして試行錯誤、悪戦苦闘の経験は仕事にフィードバックされる。建築家がベビーカーを使った経験は、実感を伴ってバリアフリーの設計、使いやすい住宅や商業空間、公共空間のデザインに生かされるかもしれない。(黒沢綾子)

産経新聞
2018年2月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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