第66回日本エッセイスト・クラブ賞が決定 阪田寛夫とAI研究の2作品が受賞

文学賞・賞

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 第66回日本エッセイスト・クラブ賞が29日、詩人で作家の阪田寛夫さん(故人)の長女、内藤啓子さんの『枕詞はサッちゃん―照れやな詩人、父・阪田寛夫の人生―』(新潮社)と、国立情報学研究所教授の新井紀子さんの『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)に決まった。

『枕詞はサッちゃん』は、童謡「サッちゃん」で知られる阪田寛夫の長女が父親との思い出を綴った一冊。離婚して新しい妻と子供ができた時に備えて「今日からおれをオジサンと呼べ」と指令したり、家族の恥部は全て創作のネタにし、本で埋め尽くされた家で「おれはダメだ」と叫んでいたりした阪田寛夫のハチャメチャな人生が明かされる。

 詩人で童話作家の工藤直子さんは、《啓子さんの筆によって、含羞の作家の、家族だけが知る、いろんな気配を感じさせてもらい、私は阪田さんに、丸ごと出会えた気がする》(波・書評)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/543067

 著者の内藤さんは、1952年大阪市生まれ。詩人で作家、阪田寛夫の長女。1975年東京女子大学文理学部日本文学科卒業。著書に妹のことを書いた『赤毛のなっちゅん―宝塚を愛し、舞台に生きた妹・大浦みずきに』がある。熱烈な宝塚ファン。

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は、人工知能「東ロボくん」の開発者である新井紀子さんがAIの誤解と限界を示す一方で、日本人の読解力の低下を指摘した一冊。東ロボくんの実験と同時に行なわれた全国2万5000人を対象にした読解力調査では恐るべき実態が判明。AIの限界が示される一方で、これからの危機はむしろ人間側の教育にあることが示され、その行く着く先は最悪の恐慌だという。

 中世史学者で東京大教授の本郷恵子さんは、《AI研究から人間の知性の構造へと迫る本書の道筋は、まことに明晰。問題の本当のありどころとその深刻さを教えてくれる》(読売新聞・書評)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/550509

 著者の新井さんは、1962年東京都生まれ。一橋大学法学部およびイリノイ大学数学科卒業、イリノイ大学5年一貫制大学院数学研究科単位取得退学(ABD)。東京工業大学より博士(理学)を取得。専門は数理論理学。2006年から国立情報学研究所教授。2008年から同社会共有知研究センター長。2017年から社団法人「教育のための科学研究所」代表理事。2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める。2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。著書に『ハッピーになれる算数』『生き抜くための数学入門』『数学は言葉』『コンピュータが仕事を奪う』などがある。

 贈呈式は、6月25日(月)に東京・内幸町の日本記者クラブで行われ、受賞者には30万円の賞金が贈られる。

 日本エッセイスト・クラブ賞は、1952年に制定されたエッセイについての賞。文藝作品等創作を除く一切の評論、随筆(一定期間内に発表されたもの)等の中より、各関係方面の推薦を受け、日本エッセイスト・クラブに設けられた選考委員によって選考され、最優秀と認められたもの一篇にたいし記念品及び賞金を授与する。

Book Bang編集部
2018年5月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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