実は知らないことばかり。サウジアラビアの政治事情

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サウジアラビア関連の記事が、連日メディアを賑わせています。記事の概要は、サウジアラビア政府に批判的だった記者が、トルコのサウジアラビア総領事館で行方不明になったというものですが、そもそもサウジアラビアが国政選挙のない絶対君主国ということを知っている人は、意外と少ないのではないでしょうか。ここでは、SBビジュアル新書『学校では教えてくれない世界の政治』から、サウジアラビアの政治事情について紹介していきましょう。

学費や医療費のみならず、住宅も無償支給!?

 サウジアラビア王国(以下「サウジアラビア」とする)は、中東にある絶対君主制の国家です。面積は約215万平方メートルであり、これは日本の5倍くらいになりますが、国土の約3分の1が砂漠地帯となっています。

 宗教について、サウジアラビアではイスラム教が国教とされ、国内にはイスラム教の最大の聖地であるメッカがあります。国民が他の宗教を信仰することは禁じられており、サウジアラビアの国籍を取得する際には、イスラム教への改宗が義務づけられています。

 経済については、世界第2位の原油埋蔵量を有し、比較的裕福な国といえます。国家による国民への支援は大きく、基本的に学費や医療費は無料、場合によっては住宅(手当)まで無償で支給されます。

立法権・行政権ともに、国王に集中

 サウジアラビアは絶対君主制の国なので、国家権力は国王に集中しています。サウジアラビアには首相もいますが、首相も国王が兼任します。
 そして、これを国会といえるかは別として、他国でいう立法機関にあたるものとして「諮問評議会」という機関があります。諮問とは“意見を求める”ことを意味しますが、この議会には「法案提出権」しかなく、実質的な立法権は国王に属します。「このような法律はどうでしょう」と意見を出す機関のイメージでしょうか。ちなみに、議員数は150人で、任期は4年です。

 この諮問評議会は一院制で、議員は専門的な知識などを有する、誠実で有能な30歳以上の生まれながらのサウジアラビア人から選ばれます。議員を選ぶのは国王であり、つまりは国王による任命制です。

 また、日本の内閣にあたる機関としては「閣僚評議会」という機関があります。


サウジアラビアの政治体制

国民には全く選挙権がないのか?

 諮問評議会の議員は国王が任命するとなると、国民には選挙(権)がない?と思うかもしれません。確かに、国政レベルについては、国民に選挙権はありません。

 しかし、サウジアラビアにも日本の地方自治体にあたるような「自治評議会」という機関があり、この議員の選出については、国民に選挙権があります。この自治評議会のメンバーの3分の2が選挙で決まり、残りは政府から任命されます。2015年12月に行われた選挙では2,106もの議席数が争われ、6,917人が立候補しました。

 ただし、この自治評議会も地方政府に対する助言機関とされ、法令をつくる権限がないため、実質的に立法権があるとはいえません。しかし、自治評議会にも、街づくりなどに関して行政に助言をする権限がある以上、国民の意思が政治に反映される可能性はあります。2015年12月の選挙において、全体の投票率は47%とやや低めでしたが、自治評議会の権限から考えると、特に低い投票率ではないのかもしれません。

諸外国から批判を受ける女性の人権問題

 サウジアラビアの国内法は、イスラム教スンニ派の原理主義(ワッハービズム)に基づいてつくられており、男女の区別が特徴的です。

 例えば、女性の服装には厳格な決まりがあり、外出時には必ずヒジャーブという、頭と体を覆う布を身につけなければなりません。また、女性は家族以外の男性との接触が禁じられ、女性が旅行したり、働いたり、医療サービスを受ける際には、男性の保護者の付き添いや、書面での許可が必要となります。サウジアラビアの女性は、日常生活を行ううえでさまざまな規制を受けていることは事実でしょう。

 さらに、サウジアラビアでは、女性が自動車を運転することも禁じられていました。女性は運転免許証の交付を受けられず、もし運転しているところを見つかれば、逮捕される可能性すらありました。このため多くの家庭では、女性の送り迎えのため、民間の運転手を雇っていました。

 しかし、2017年にサルマン国王が女性に自動車の運転を許可する勅令を出したことで、2018年6月24日、サウジアラビアで初めて、女性の運転が解禁され、多くの女性が免許の交付を受けました。男女平等の実現という世界的な流れを受けて、サウジアラビアも変化しつつあります。

 このような女性に対する制約は、政治面にも表れています。例えば、日本の地方自治体にあたる「自治評議会」の選挙について、2015年12月までは、女性に選挙権と被選挙権が与えられていませんでした。

 この点についても諸外国から批判されていたところ、2015年12月の選挙において、初めて女性の政治参加が実現します。この選挙では、女性に「立候補」する権利も認められ、この選挙において初めて、サウジアラビアの女性議員が誕生します。先ほど、この選挙の投票率は47%といいましたが、女性に限ると投票率は80%を超えました。

 なお、国政に関与する「諮問評議会」の議員は、国王より任命されますが、この議員も従来は男性のみに限られていました。しかし、2013年に初めて、30人の女性議員が国王により任命され、現在に至っています。

●ちょっと雑談
サウジアラビアには、政党が存在しません。立法権が国王に属しているため、政治的な団体を結成することもない…ともいえますが、それ以前に、そもそも政治的結社(結社とは団体のことと考えればよいでしょう)をつくることが禁止されています。

「サウード家によるアラブの王国」という国の名

 そもそも、「サウジアラビア王国」という国の正式名称は、「サウード家によるアラブの王国」という意味を持ちます。要するに、サウジアラビアは「サウード家」という王族が統治する王政国家なのです。

 1700年代半ば、サウード家はアラビア半島中央部にあるナジュド地方の小さな町を治める豪族でした。当時、この地方ではムハンマド・イブン・アブド・アル・ワッハーブによって新しいイスラム宗教運動(この運動はワッハーブ派と呼ばれる)が始められます。このワッハーブ派とサウード家の協力関係がつくられたことで、サウード家は勢力を拡大していきます。

 その後、サウード家は滅亡と再建を繰り返しながらも、長い時間をかけて支配領域を拡大し、中東における一大王国へと発展しました。そして、1932 年に国名を「サウジアラビア王国」と変え、現在に至っています。

 サウジアラビアはその国名が示すように、サウード家出身者が統治する王国であり、それゆえ絶対君主制という政治体制が現在でも残っているのです。

──いかがでしたでしょうか。サウジアラビアの政治事情について基本的なところが少しでもわかると、世間を賑わしているニュースの見方が、また違ってくるのではないでしょうか。『学校では教えてくれない世界の政治』では、このほかにも、世界の動きを知るうえで重要といえる国や、日本と関わりが深い国を題材にしながら、政治に関する一般教養と知的雑学がまとめまられています。新聞やテレビで報道されているニュースをより深く、より面白く読み取れるようになりたい人は、チェックしてみるとよいでしょう。

SBCrOnline
2018年10月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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