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- 月まで三キロ
- 価格:1,760円(税込)
第38回新田次郎文学賞が16日に発表され、伊与原新さんの『月まで三キロ』(新潮社)に決まった。
受賞作『月まで三キロ』は、地球惑星科学専門の元研究者である著者が、科学と人の想いを結びつけて描いた短編集。表題作は事業の失敗、離婚、父親の介護などから絶望し、死に場所を探してタクシーに乗った主人公が、「月に一番近い場所」に向かう物語。そのほか、素粒子やアンモナイト、雪の結晶など、科学と感情が交錯する5篇が収録されている。
文芸評論家の北上次郎さんは、本作について「背景にあるのは膨大な時の流れであり、研究者たちの地道な観察だ。いわば、その瞬間だけ沸騰する感情とは、正反対の世界といってもいい。伊与原新の本書では、それが同時に語られるのである。本来なら正反対であるにもかかわらず、苛立つ心、孤独と不安、そういったものを癒してくれるものとして、自然科学が出現してくるから新鮮なのではないか」(波・書評)と評している。
(https://www.bookbang.jp/review/article/562086)
著者の伊与原新さんは、1972年大阪生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2003年から富山大学理学部に助教として勤務した後、2010年に『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞し、小説家デビュー。著書に『ルカの方舟』『博物館のファントム』『梟のシエスタ』『蝶が舞ったら、謎のち晴れ 気象予報士・蝶子の推理』『ブルーネス』『コンタミ』などがある。
新田次郎文学賞は、山岳小説の分野ですぐれた作品を残している作家・新田次郎さんの遺志により創設された文学賞。前年に刊行された作品を対象にノンフィクション文学、または自然界を題材にした優れた作品に与えられる。
昨年は、奥山景布子さんの『葵の残葉』(文藝春秋)が受賞。過去には沢木耕太郎さんの『一瞬の夏』(第1回)、佐々木譲さんの『武揚伝』(第21回)、原田マハさんの『リーチ先生』(第36回)などが受賞している。
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