宇宙に憧れを抱くすべての人々に捧げる青春SF小説『SIGNAL シグナル』【山田宗樹インタビュー】

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SIGNAL シグナル

『SIGNAL シグナル』

著者
山田 宗樹 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041097908
発売日
2020/10/01
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

宇宙に憧れを抱くすべての人々に捧げる青春SF小説『SIGNAL シグナル』【山田宗樹インタビュー】

[文] カドブン

『百年法』『代体』といったSFエンターテインメントを刊行し続ける山田宗樹さんによる、待望の新刊『SIGNAL シグナル』は、300万光年離れた宇宙から地球に放たれた“シグナル”の正体に迫る、青春SFの傑作です。本書の魅力をお伝えするべく、創作背景を著者に伺いました。

■宇宙人の存在が確定した世界をリアルに描く

――本日はよろしくお願いします。

山田:先日『SIGNAL シグナル』(以下『SIGNAL』)見本が手元に届きましたが、みっちぇさんのイラストが素晴らしいですね。カバーを広げたときの感じも好きです。中央の人物が作中に登場する双眼鏡を持っているんですよ。これも嬉しいですね。

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宇宙に憧れを抱くすべての人々に捧げる青春SF小説『SIGNAL シグナル』...
宇宙に憧れを抱くすべての人々に捧げる青春SF小説『SIGNAL シグナル』…

――前作『人類滅亡小説』から2年が経ち、本作はファンにとっては待望の新刊だと思います。ある日、天文台が捉えた電波によって、地球外知的生命体の存在が明らかになり、宇宙に強い憧れを抱く中学生の主人公の芦川翔君が、この一大ニュースの感動を分かち合う仲間を探すところから物語が始まります。近刊では立て続けにハードなSF大作を刊行されていますけれども、本作は爽やかな読み味が際立ちますね。

山田:『SIGNAL』では芦川くんの軽妙な語り口で読者に楽しんでもらいたい、と思いました。それから、できるだけリアルな世界を描きたかったんです。作中では、地球外知的生命体から地球に向けて何らかの信号が届きます。少し前に『コンタクト』という映画がありましたけど、実際にいわゆる宇宙人に遭遇してしまうと、途端に絵空事になりそうな気がして……。リアリティという意味では達成できないのではないかと感じています。

 そのうえで、宇宙人――地球外知的生命体から信号が届いた世界は、いったいどういった状況になりえるのだろう、と想像しながら書きました。

――おっしゃる通り、地球外知的生命体が本当にいるとわかった世界で様々な想いを巡らせる主人公たちが、現実世界と地続きに描かれていると感じました。本来ならば世界的な規模の問題になりえる壮大なスケールの設定ながらも、本書で描かれるのは、わりと個人的な物語ですね。

山田:読者にどう思われるのかというのは、確かに気にはなるんですよね。ただ、やたらと物語を広げたくはありませんでした。自分たちにも身近な話なんだけども、実は遠い宇宙の果てにも思いが通じるような作品にしたかったんです。

――知的好奇心をくすぐられるサイエンス的な要素も満載です。資料もかなり読み込まれたのでしょうか。

山田:資料の読み込みは、いつもと変わらないペースでした。しかし、あまり詰め込みすぎても読者は理系の方々だけではないので、どこまで書いていいのかと不安を感じつつ気を付けながら書いたつもりです。かといって、あまりあっさりとしてしまっては説得力に欠けますので、調整しながら科学知識をちりばめていったという感じですね。

■子供の頃に憧れた宇宙のロマンを小説に

――もともと山田さんは、宇宙への関心が強かったのでしょうか。

山田:宇宙は子供のころから好きでした。小学校の低学年の時期に百科事典でアンドロメダ銀河の写真を初めて見たんですよ。小さな星しか見えない夜空の向こうに、あんな物凄いものがあるんだ、と衝撃を受けました。それ以来、宇宙の想像を絶するスケールに惹かれまして。

 じつは、天文学者になりたかったんです。自分の学力が及ばず、結局は断念しましたけども(笑)。だから子供のころの夢を、小説という形で叶えたような、そんな気持ちもあります。

――まるで主人公の芦川君のように! 宇宙に憧れる芦川君が出会ったディラックこと朱鷺丘先輩との理系男子同士の関係性も、素敵です。

山田:芦川君と私は、かなりシンクロしています。でも私は、彼ほどピュアな青年ではなく、もっと鬱屈していましたけど(笑)。当時から、宇宙の規模を想像しながら、地球の小ささを感じるというのは好きでしたね。宇宙には驚きが満載でした。

 この本を読んで、夜空を見上げたくなるような気分になってもらえると嬉しいです。執筆にあたって、自分でも芦川君が使っている双眼鏡「モナーク7」を試してみて、空気が澄んだ快晴の夜にアンドロメダ銀河は観測できました。あの感動は忘れられません。

 また、ちょうどこれを書いていた時期に、私の子供が高校生でして、送り迎えをしたことがあるんですよね。その時に登下校する生徒たちを見ていたので、その雰囲気を本作にも活かせていたのかもしれません。

■壮大なスケールのテーマで描きたかったこと

宇宙に憧れを抱くすべての人々に捧げる青春SF小説『SIGNAL シグナル』...
宇宙に憧れを抱くすべての人々に捧げる青春SF小説『SIGNAL シグナル』…

――『SIGNAL』の第一部では、宇宙への憧れを抱く主人公・芦川翔と先輩たちとの学生時代が描かれました。その17年後の第二部では、レセプターという電波信号とは別の“声”が聴こえてしまう人々が登場します。

山田:第一部を書き上げたあと、第二部をどうしようかと相当悩みました。レセプターの存在は第一部にも描いていますが、それをどう使うかは、まったく決めていなかったので。

――えっ! それは意外です。

山田:一カ月くらいは全く進まず……、投げだそうかと思ったこともあるくらいです。しかし、あるとき突然、17年後に朱鷺丘先輩が宇宙からのシグナルを解析して記者会見をするシーンを思いつき、一歩ずつ前に進みました。そこから芦川君がサイエンスライターになり、さらにレセプターとの関わり方を構築していった感じです。

――レセプターたちは皆個性豊かですね。彼らは超常的な出来事を体験しますけれど、それぞれの事情が描かれることで、リアリティが担保されていると感じました。

山田:初めてレセプターの人々が一堂に会する場面がありますが、ひとりひとりの事情を詳細に描いてはテンポが落ちてしまうので、彼ら6人の会話のなかでキャラクター像を作り上げ、読者に伝えなくてはなりませんでした。この場面はかなり気をつかって書いた覚えがあります。

 例えばランスというキャラクターは、乱暴な言葉遣いですけども自分をどこか客観できている人物で、単に下品で野暮な男ではありません。また、ミオという女性はこれからレセプターたちの要になってゆく、ということを読者に伝えなくてはならない、と意識しました。キャラクターが被ってはいけないけれど、極端なキャラにしてしまってはリアリティに欠けてしまいます。6人の個性は、書いていくうちに全体のバランスを考えながら固めてゆきました。

――本作はこれまでの山田さんの作品と比べても大きなテーマを扱っていると思います。そのうえで芦川君をはじめとする人間たちの物語をしっかりと描かれています。テーマは大きくても、描くべき世界のラインというものが山田さんの中にあるのではないかと感じましたが。

山田:私が子供の頃に抱いていた宇宙への想い、それがベースにあるので、そこから外れるような物語にはしたくなかったんです。当時の自分が体験したかもしれない世界を、この小説で描きたいという思いが一つのベースラインになっています。

 子供の頃、宇宙だけでなく、UFOも好きだったんですよ(笑)。UFOを見たかったし、宇宙人がいたらいいな、とずっと思っていました。なので、さんかく座のM33銀河から地球を目指す宇宙人――M33ETIたちにも思いを馳せてもらえたら嬉しいです。

■異星人との宇宙戦争はありえない?

――M33ETIが地球に来るのか来ないのか、彼らが送り続けるシグナルにはどんなメッセージが込められているのか、ドキドキしながらページをめくってゆきました。

山田:じゃっかんネタバレになってしまいますが……。宇宙のスケールを考えると、宇宙戦争というのはあり得ないと思うんですよ。戦争するには宇宙は広すぎるし、結局は地球レベルの考え方なんですよね。そもそも知的生命体に出会うことも難しいので、宇宙船が出てくると途端に嘘っぽくなってしまう。だから作中でできることも限られてきます。

――山田さんご自身は、宇宙人は存在すると思いますか?

山田:いてほしいですし、いるとは思うんですけども、接触するのは難しいでしょうね。ましてや地球に来ているというのは考えられません。わざわざこんな遠いところまで来ないでしょうし、メリットもないだろうと……。人々は宇宙人という存在に、どうしても自分を投影してしまうんですよね。だから人間っぽくなってしまう。そうするとどんどんリアリティがなくなってしまうのではないかと考えました。

――爽やかで希望に満ちた素晴らしいラストでした。楽しい想像力が掻き立てられる箇所がいっぱいある作品だと思います。

山田:ありがとうございます。書きたいことはすべて詰め込みました。説明不足と捉えられかねない部分も多くあるんですが、そこはあえて書きませんでした。これ以上書いては、余計なものになってしまいますから。読者の皆様には想像を巡らせながら楽しんでいただけたら幸いです。

■書誌情報

それは破滅への予兆か、人類への福音か――。
三百万光年先から地球へ向けて送信されるシグナルの正体とは?
『百年法』『代体』の著者が放つ“アオハル”SF長篇!

宇宙に憧れを抱くすべての人々に捧げる青春SF小説『SIGNAL シグナル』...
宇宙に憧れを抱くすべての人々に捧げる青春SF小説『SIGNAL シグナル』…

書名:SIGNAL シグナル
著者名:山田宗樹
定価:本体1,700円+税
KADOKAWA公式サイト
https://www.kadokawa.co.jp/product/322004000197/

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取材・文:編集部 

KADOKAWA カドブン
2020年10月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

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