第23回大藪春彦賞が決定 坂上泉『インビジブル』

文学賞・賞

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 第23回大藪春彦賞の選考会が22日、東京・新橋の第一ホテル東京でリモート形式にて行われ、坂上泉さんの『インビジブル』(文藝春秋)の受賞が発表された。

 受賞作の『インビジブル』は、実在した「大阪市警視庁」を舞台に殺人事件の真相に迫りながら、戦後の大阪の「闇」を圧倒的なリアリティで描き切ったミステリ作品。

 文芸評論家の細谷正充さんは、本作について「警察小説は無数にあるが、戦後の一時期に実在した自治警を扱った作品は、本書が初めてだろう」と紹介。「警察小説の収穫であり、戦後史ミステリーの収穫といえる一冊」(中日新聞社・書評)と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/642927

 著者の坂上さんは、1990年兵庫県生まれ。東京大学文学部卒。専攻は近代史。2019年「明治大阪へぼ侍 西南戦役遊撃壮兵実記」で第26回松本清張賞を受賞。同作を改題した『へぼ侍』で第9回日本歴史時代作家協会賞新人賞を受賞している。

 大藪春彦賞は、作家・大藪春彦の業績を記念して創設された文学賞。主にハードボイルド小説・冒険小説に分類される小説を対象とし、優れた物語世界の精神を継承する新進気鋭の作家及び作品に、毎年、授与される。第23回の選考委員は、大沢在昌さん、黒川博行さん、東山彰良さんの三名が担当した。

 昨年は、愛と暴力と金に縛られながら足掻く男女を描いた赤松利市さんの『犬』(徳間書店)が受賞。過去には福井晴敏さんの『亡国のイージス』(第2回)、雫井脩介さんの『犯人に告ぐ』(第7回)、近藤史恵さんの『サクリファイス』(第10回)などが受賞している。

 第23回の候補作品は以下のとおり。

『計策師 甲駿相三国同盟異聞』赤神諒[著]朝日新聞出版
『ボニン浄土』宇佐美まこと[著]小学館
『インビジブル』坂上泉[著]文藝春秋
『地面師たち』新庄耕[著]集英社

Book Bang編集部
2021年1月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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