百田尚樹 マスメディア風刺の効いた“社会派”ミステリ『野良犬の値段』文庫版でベストセラー

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 5月17日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、文庫第1位は『風に訊け 空也十番勝負(七)』が獲得した。
 第2位は『流浪の月』。第3位は『続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー(4)』となった。

 4位以下で注目は7位に初登場の『野良犬の値段(上)』。2020年12月に刊行された百田尚樹さん初のミステリ作品の文庫版。ネット上に現れた「誘拐サイト」をきっかけに、新聞やテレビ・週刊誌などのメディアから、SNSや5ちゃんねる・ウェブサイトなどのネットまで、日本全体を巻き込んだ劇場型犯罪の顛末が描かれる。

 同書には「偽善に満ちた論調」で知られる新聞社「東光新聞」や「常日新聞」、三千億の内部留保を持ちながら受信料取り立てに躍起になるテレビ局「JHK」。「愛は世界を変える」という嘘くさいキャッチコピーのもとに「三十六時間テレビ」を放映する「大和テレビ」、「うちは雑誌が売れればなんでもいいんだ」と宣い社会正義など全く眼中にない「週刊文砲」など、現実のマスメディアを思い起こさせる描写が多数登場し、刊行当時大きな話題となった。

1位『風に訊け 空也十番勝負(七)』佐伯泰英[著](文藝春秋)

七番勝負は新たな武者修行者の登場で幕を開ける。老爺、愛鷹とともに旅を続けるひとりの武芸者。安芸広島藩の重臣の息子で、間宮一刀流の達人でもあるその男は、江戸を訪れた折に、自ら同様に命を賭して武者修行の旅を続ける空也の存在を知る。己と空也はいつの日か相まみえると確信し、旅を続けるが……。一方、異国での戦いを終えた空也は、船に乗りこみ、数年にわたった修行の地である西国をはなれる。下船したのは長州萩。ここが新たな修行の地となった。稽古の場を求め、萩の道場を訪れた空也は、ひょんなことから藩主派、家老派による萩藩の対立に巻き込まれるが、家老派と自らの因縁を知り、藩主派に力を貸すことに。金も力もない藩主派の同年代の仲間たちと共に家老派を倒すための策略を巡らせる空也たちは目的を達することができるのか?十六歳から四年を過ごした西国をついに離れ、新たな武者修行者が登場するなど、空也の新たな冒険が始まり、驚きに満ちた七番勝負の行方は――。(文藝春秋ウェブサイトより)

2位『流浪の月』凪良ゆう[著](東京創元社)

最初にお父さんがいなくなって、次にお母さんもいなくなって、わたしの幸福な日々は終わりを告げた。すこしずつ心が死んでいくわたしに居場所をくれたのが文だった。それがどのような結末を迎えるかも知らないままに――。だから十五年の時を経て彼と再会を果たし、わたしは再び願った。この願いを、きっと誰もが認めないだろう。周囲のひとびとの善意を打ち捨て、あるいは大切なひとさえも傷付けることになるかもしれない。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。本屋大賞受賞作。(東京創元社ウェブサイトより)

3位『続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー(4)』佐島勤[著](KADOKAWA)

達也たちメイジアン・カンパニーとレナが代表を務めるFEHRが手を結ぶ!(KADOKAWAウェブサイトより)

4位『日雇い浪人生活録(十三) 金の妬心』上田秀人[著](角川春樹事務所)

5位『死刑にいたる病』櫛木理宇[著](早川書房)

6位『三千円の使いかた』原田ひ香[著](中央公論新社)

7位『野良犬の値段(上)』百田尚樹[著](幻冬舎)

8位『傑作はまだ』瀬尾まいこ[著](文藝春秋)

9位『はぐれ又兵衛例繰控 五 死してなお』坂岡真[著](双葉社)

10位『告ぐ雷鳥 上絵師 律の似面絵帖』知野みさき[著](光文社)

〈文庫ランキング 5月17日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2022年5月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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