【産経の本】『「軍艦マーチ」の誤解と真実』谷村政次郎著

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■第一人者が正す〝軍国主義〟の偏見

「軍艦マーチ」と聞けば、誰もがあの軽快な旋律を思い浮かべるだろう。本書は、よく知られている「軍艦マーチ」こと行進曲「軍艦」の120年以上にわたる歴史を再検証した一冊である。

鳥山啓作詞、瀬戸口藤吉作曲の「軍艦」は日露戦争前の明治33年の初演以降、海軍の発展とともに折々に演奏され国民に親しまれた。だが戦後は逆風にさらされ、昭和58年には米国での先進国首脳会議に出席した中曽根康弘首相(当時)の歓迎式で演奏されると、「軍国主義」を想起させるとメディアの批判を浴びた。その後、ペルシャ湾掃海派遣部隊の帰国式典でも、同じ理由で演奏しないよう首相官邸から指示が出る(のち撤回)など冷遇されてきた。

海上自衛隊東京音楽隊長として世界各国で演奏してきた著者は、退官後に同曲の歴史を徹底して調査。こうした扱いは「誤解と無知」によるもので、アジアや欧米でも問題になったことはないと断言する。

さらに本書では初演時の秘話、作曲者と作詞者の関係、ドイツでの歴史的行進、戦後にパチンコ店でおなじみの曲となった訳、同じ旋律の校歌の存在など知られざる事実を発掘し、名曲に新たな魅力を加える。(産経NF文庫・1012円)

産経新聞
2022年10月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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