【産経の本】『李登輝秘録』河崎眞澄著

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■台湾民主化にかけた生涯

台湾の李登輝元総統が97歳で死去して3年余りがたった。中国の圧力にさらされ、台湾と日本はいまも激流の中にいる。李氏は現代の日本人よりもずっと古式ゆかしく端正な日本語を用いて、「日本はアジアの、世界のリーダーでなければならない」と日本人を鼓舞してきた。

台湾と上海という海峡の両岸で産経新聞支局長を歴任した著者は本書で、李氏が大正から令和へと生き抜いた軌跡をたどり、その生涯を通じて台湾と日本を考えることで、中国や米国など関係国も含む地域の近現代史を浮き彫りにしている。

著者は、李氏や関係者の証言、新たに発掘した資料などから、これまでほとんど知られていない「史実」も掘り起こした。中でも1995年、中国が台湾沖に向けて軍事演習と称し、弾道ミサイルを発射して武力威嚇。李氏の側近を通じて、その舞台裏に迫る場面は読み応えある。

来年1月に投開票される次期総統選の結果は、台湾の趨勢(すうせい)を決める重大な分岐点になる。民主主義を求める国際社会のあらゆるリーダー、そして市民が、祈るような気持ちで選挙戦の行方を見守っている。李氏が生涯をかけた台湾民主化の歩みを、いまこそ本書でかみしめたい。(産経NF文庫・1150円)

産経新聞
2023年9月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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