「糖質依存」をやめて… 医師が語る“元気に生きる”ための「賢い食べ方」とは?【後編】

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賢い食べ方のヒントを教えます!(※画像はイメージです)

 仕事の合間に、テレビを見ながら、つい甘いものに手を伸ばしてしまう。
 もしかしたら、あなたは“糖質依存”かもしれない――。

 甘いものがないと落ち着かない、そんな毎日から自由になって健康で幸せになろうとする人を応援したい。著書『死ぬまで若々しく元気に生きるための賢い食べ方』(あさ出版)でこう語るのは、医師の山下あきこ氏だ。医学博士で神経内科の専門医である山下氏は、大学病院の内科医や米国留学を経て、糖質に頼らない生き方を提唱している。

 目指すべきは単に糖質を断つのではなく、甘いものがないとイライラしてしまう“糖質依存”からの脱却だという。甘いものを食べ過ぎることでストレスが増え、そのストレスを解消しようと更に甘いものを食べてしまう“糖質依存”。どうすれば依存しない食生活を送れるのか、本書をもとに前後編にわたって、“賢い食べ方”を探ってみる。

(以下は『死ぬまで若々しく元気に生きるための賢い食べ方』をもとに再構成したものです)

※この記事は後編です(前編を読む

「低カロリー」「低脂肪」は本当に健康的?

 食品ラベルの言葉には、どんなメリットがあるのか考えて選ばないといけません。例えば、「低カロリー」の表示。カロリーが低い理由は何でしょうか? 

 砂糖をアスパルテームやアセスルファムKなどの人工甘味料に変えているからです。アスパルテームは砂糖の200倍の甘さがあるので、カロリーとしては1gあたり4キロカロリーで砂糖と全く同じなのですが、ごく少量しか使わないで済むために、カロリーを低く抑えることができます。

 アスパルテームは糖質オフのジュースやビールなど、日本の加工食品には多数使われていますが、甘みが強いため、味覚を鈍化させます。そして小腸で分解されるとフェニルアラニンという物質になって、ドーパミンやノルアドレナリンといった快楽と興奮をもたらすホルモンが合成されていきます。

 いわゆるシュガーハイを作り出すのです。頭痛、攻撃性の増加、抑うつ、不眠などの原因にもなります。

 アスパルテームが分解されると、メタノールやアスパラギン酸も作り出されます。これらは神経毒です。摂り過ぎるとふらつきやめまいなどのお酒に酔ったような症状を引き起こしたり、鼻水や涙、目が痛くなるなど、アレルギーのような症状が出ることもあります。

 これらはほんの一例で、人工甘味料による毒性の報告は増え続けています。安全性を高めたり、使用を規制したりと、状況が改善している部分もありますが、甘味を強く感じさせる物質である限り、味覚が鈍くなることは避けられないでしょう。

 次に、低脂肪はどうでしょうか? 糖質を控えて脂肪も控えたら、残る三大栄養素はタンパク質しかありません。タンパク質だけで、人は生きられません。「脂肪を控えたら体に良い」という間違った考えを、今すぐ捨ててしまいましょう。

 これは、ありがちな思考だと思いますが、脂肪を作るのは糖であって脂肪ではないのです。生化学の本を見れば、この事実は明らかです。では、なぜ油が良くないと世間で信じられ続けているのでしょうか? 

 1980年に発表されたアンセル・キーズの研究によると、脂肪分の多い食事をする人はコレステロールが高いこと、コレステロールが高い人は心臓病になるリスクが高いことが示されました。この研究はとても有名で、世界中に大きな影響を与えました。世界7ヵ国(日本、イタリア、イングランド、ウェールズ、オーストラリア、カナダ、イタリア)のデータが入っていました。ちなみにこのとき日本は心臓病の割合が低かったのですが、脂肪摂取量が少なく、糖質の摂取も少なかったのです。しかしこの研究は、脂肪が悪影響をもたらすという仮説のもと行われたため、糖質が少ないことには注目されていませんでした。

 そして、トランス脂肪酸も動物性脂肪も脂質としてまとめられたので、脂質の種類による影響は全く分かりません。
イヌイットやハッザ族などは狩猟で生きていて、動物性脂肪が主な栄養源となっていますが、心臓病になる人はほとんどいません。これらの民族は塩分摂取量が低いので、そうした影響もあるかもしれません。アンセル・キーズの研究からは、このような民族のデータは外されています。

 このように、私たちは、世界的に有名な大規模研究をもとに作られた常識の中で生きています。40年前の情報をもとに、今もたくさんの人が低脂肪ラベルの付いた食品に手を伸ばしてしまうのです。

良質なオイルをたっぷり摂って

 低脂肪の商品をお勧めしない理由として、もっと大事なことがあります。

 糖質を控えた場合には、脂質がエネルギーになります。肝臓や腎臓のタンパク質も利用されますが、わずかです。糖質も脂質も控えてしまうと、次のエネルギー源は筋肉のタンパク質しかないので、プロテインなどを使ってどんどんタンパク質を補給しないと、必要量の摂取が追いつかずに筋肉を分解してエネルギーが使われてしまうことがあるのです。
ジムでパーソナルトレーニングなどを受けている人は、筋トレの直後や起床時などにプロテインの摂取を勧められると思います。脂質を同時に摂ることによって筋肉のタンパク質を温存できるので、より効率的です。

 そして40~50代の女性に気をつけていただきたいのは、更年期に脂肪を控えないでほしいということです。

 女性ホルモンは、脂肪が運び屋となっています。ただでさえ急速に女性ホルモンの分泌が減っていくこの時期に脂肪が不足すると、貴重な女性ホルモンを臓器に届けることができず、不調のもとになります。疲れやすい、気分がふさぐ、肌つやがよくないなど、いつもと違う自分を感じて、ちょうどそれが45~55歳の間に始まったのであれば、更年期の症状かもしれません。そんなときは、良質なオイルをたっぷり摂るように心がけましょう。

 繰り返し使った油やマーガリンなどの植物油脂は控え、ココナッツオイル、オリーブオイル、バター、アマニ油、エゴマオイル、青魚やナッツ、アボカドなどの良質なオイルを多く含む食品を積極的に摂ることで、糖質に頼らなくても疲れず痩せやすい体を作ることができます。すぐにエネルギーとして利用でき、免疫力アップなどにも役立つココナッツオイルは、特にお勧めです。

鉄分を見直して

 また、糖質の摂り過ぎは、心の安定に役立つビタミンB6やナイアシンなどを消費してしまいます。疲労の軽減に役立つビタミンCも、糖質過多で消費されます。

 心と体の元気を保つためのビタミンを糖質によって使い果たしてしまうので、結局のところ心が不安定になります。

 甘いものや炭水化物ばかり食べていて、鉄分を摂っていないからイライラしやすい、という人もいます。

 鉄不足だと、心の安定に必要なセロトニンなどをうまく作れません。さらに鉄が足りないと、胃腸の粘膜が弱ってタンパク質などをうまく吸収できなくなり、エネルギーが不足しがちになってしまいますから。

 ***

 なんとなく健康に良さそうだからと「低カロリー」「低脂肪」を選んだら、逆効果となってしまうかもしれない。耳障りのいい言葉に振り回されず、体のために摂りたい栄養素をきちんと考えることが重要なようだ。
 他にも、山下あきこ氏は『死ぬまで若々しく元気に生きるための賢い食べ方』で糖質に依存しない脳をつくるためのトレーニングや、おすすめしたい食事の作法も紹介している。
 健康長寿でいるために、甘いものからの脱却を考え始めることが重要かもしれない。

前編:「甘いものがないとイライラ…」医師が伝える“糖質依存”の危険性とは? を読む

山下 あきこ
医学博士、内科医、神経内科専門医、抗加齢医学専門医。 1974年佐賀県生まれ。1999年川崎医科大学卒業、2001年~福岡大学病院脳神経内科勤務、2005年~フロリダ州メイヨークリニックジャクソンビル神経内科留学、2007年~佐賀県如水会今村病院神経内科医長などを経て、病気を治すより、人々が健康づくりを楽しむ社会を目指し、2016年に株式会社マインドフルヘルスを設立。アンチエイジング医学、脳科学、マインドフルネス、コーチングを取り入れたセミナー、企業研修、個人健康コンサルティング等を行っている。自分自身の習慣作りと人に伝える活動ができるマインドフル・ライフコーチの講座が好評。「ZIP!」「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)など、メディア出演も多い。

あさ出版
2023年2月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

あさ出版

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