上半期一番売れた本は村上春樹『街とその不確かな壁』40万部を突破 角田光代による書評も[文芸書ベストセラー]

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 5月30日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『汝、星のごとく』が獲得した。
 第2位は『くもをさがす』。第3位は『街とその不確かな壁』となった。

 3位の『街とその不確かな壁』は4月13日に発売された村上春樹さんの最新長編。物語は現実の世界ともうひとつの「高い壁に囲まれた街」で展開する。失踪した彼女を求め「高い壁に囲まれた街」を訪れた主人公はやがて実世界に帰還。40代となった主人公は福島県の小さな図書館長として働きながら、現実世界ではない場所を求める人々と交流する。作家の角田光代さんは同書の書評で《壁に囲まれた世界はいかにも不気味で、黄泉の国を思わせるのだが、そこで暮らす自分が「本当のわたし」だというガールフレンドの言葉を信じるならば、プラトンの説くイデア界みたいなものなのかもしれない。そちらが本質であり、現実世界で私たちが目にするものはそれらの影で、私たち自身が仮の姿である。》と推察したうえで、「壁に囲まれた街」は《私たち自身の奥深くに、すでにあるのかもしれない。そしてそこには、私たちが失った多くのものや人が、時間という概念から解放されて存在している。小説に描かれる街は不気味だが、しかしそう思うと、不思議にやすらかな気持ちにもなる。》と評している。

 同書は6月1日に発表されたトーハン調べの2023年上半期ベストセラーで総合1位を獲得。発売から1か月半で電子書籍とあわせて累計40万部を突破している。

1位『汝、星のごとく』凪良ゆう[著](講談社)

その愛は、あまりにも切ない。正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく。本屋大賞受賞作『流浪の月』著者の、心の奥深くに響く最高傑作。ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。(講談社ウェブサイトより抜粋)

2位『くもをさがす』西加奈子[著](河出書房新社)

カナダで、がんになった。「私は弱い。徹底的に弱い」。でもーーあなたに、これを読んでほしいと思った。祈りと決意に満ちた著者初のノンフィクション。(河出書房新社ウェブサイトより)

3位『街とその不確かな壁』村上春樹[著](新潮社)

十七歳と十六歳の夏の夕暮れ……川面を風が静かに吹き抜けていく。彼女の細い指は、私の指に何かをこっそり語りかける。何か大事な、言葉にはできないことを――高い壁と望楼、図書館の暗闇、古い夢、そしてきみの面影。自分の居場所はいったいどこにあるのだろう。村上春樹が長く封印してきた「物語」の扉が、いま開かれる。(新潮社ウェブサイトより)

4位『物語の種』有川ひろ[著](幻冬舎)

5位『戦物語』西尾維新[著](講談社)

6位『ヨモツイクサ』知念実希人[著](双葉社)

7位『コメンテーター』奥田英朗[著](文藝春秋)

8位『八男って、それはないでしょう! みそっかす 1』Y.A[著](KADOKAWA)

9位『1×∞ 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!』マツヤマユタカ[著](アルファポリス)

10位『佐々木とピーちゃん 7 疑似家族、結成! ~温かな家庭を夢見る末娘と、てんでバラバラな家人たち~』ぶんころり[著](KADOKAWA)

〈文芸書ランキング 5月30日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2023年6月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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