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- 「おかえり」と言える、その日まで
- 価格:1,540円(税込)
山岳地帯や里山における行方不明者の捜索を行う民間団体「LiSS(リス)」の活動を記録したノンフィクション『「おかえり」と言える、その日まで―山岳遭難捜索の現場から―』が刊行された。
深い悲しみや苦しみを抱える家族をケアしながら、行方不明者のプロファイリングを元に捜索している同団体代表が経験してきた遭難捜索の現場とは?
家族に話を聞き、プロファイリングで消えた足跡を辿る6つのエピソードの中から一部を試し読みとして紹介します。
遭難したのは、何日目?
私たちがKさんのお兄さんから捜索依頼を受けたのは、Kさんが行方不明になってから1ヶ月以上経った、2018年11月29日のことだった。
自宅に残された行動計画書には、2泊3日の予定がこう書かれていた。
1日目 大倉から入山し、ミズヒ沢、鍋割山、鍋割山北尾根、ユーシンロッジ
2日目 石小屋沢、ヤシロ沢
3日目 檜洞沢、西丹沢ビジターセンター
実際に地図で見てみると、Kさんの登山計画はかなり広範囲にわたる。どこから捜索をしたらいいか……と途方に暮れかけたところ、登山の経験があるKさんのお兄さんから、捜索範囲についてご要望をもらった。
それは、「2日目の沢登り中に遭難した可能性が高い。だから、計画書にあった石小屋沢、ヤシロ沢、加えて沢登りからユーシンロッジへ戻るルートとなる同どう角尾根周辺の捜索をしてほしい」というものだった。
Kさんが2日目に予定していた下山ルートには、急峻な尾根で両側は切れ落ちている箇所があり、そこから滑落したと考えるのは自然だった。長年丹沢に通い、山に慣れているKさんのことだ。山道には精通しているはず。道に迷うより、どこかで滑落してしまった可性が高い。そして事故が起きたとするならば、確かに最も危険度の高い2日目の計画にあるどこかだろうと私たちも推測した。
問題は季節だ。例年、丹沢は12月末頃から雪が積もり始める。雪が降れば遺留品や遭難者の身体は雪の下に隠され、捜索が困難になってしまう。残された捜索時間は1ヶ月しかなかった。
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1896年(明治29年)創立。『斜陽』(太宰治)や『金閣寺』(三島由紀夫)、『さくらえび』(さくらももこ)、『1Q84』(村上春樹)、近年では『大家さんと僕』(矢部太郎)などのベストセラー作品を刊行している総合出版社。「新潮文庫の100冊」でお馴染みの新潮文庫や新潮新書、新潮クレスト・ブックス、とんぼの本などを刊行しているほか、「新潮」「芸術新潮」「週刊新潮」「ENGINE」「nicola」「月刊コミックバンチ」などの雑誌も手掛けている。
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