大人気学園ホラー&ミステリ最新作! 今年の〈もう一人〉は誰……? 綾辻行人『Another 2001(上)』試し読み

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あの夏に見崎鳴(みさき めい)と出会った少年・想(そう)は、春から夜見山北中学三年三組の一員となった。〈現象〉に備えて今年は特別な〈対策〉を講じる想たちだったが、歯車が狂いはじめ、ついに惨劇の幕が開く! 相次ぐ理不尽な“死”の恐怖、そして深まりゆく謎。〈夜見山現象〉史上最凶の〈災厄〉に、想と鳴はどう立ち向かうのか!?

大人気学園ホラー&ミステリ『Another』の3年後を描いた本書より、冒頭部分を特別公開いたします。

 ***

Introduction

 なあ。このあいだの話、どう思う?

 このあいだの……って、卒業生からの、あの申し送りの件?

 ああ。信じるか、あの話。

 どうだろう。

 信じられない?

 ──微妙。

 ああいう〈申し送りの会〉が毎年、三月のこの時期に開かれてるんだな。前の三年三組から次の三年三組へ。

 次の──四月からの新しい三組のメンバーが決まった時点で。

 学校のほうも事情を心得ていて、三組になると決まった生徒には、四月の正式発表を待たずに情報を伝えてくるわけだろう。だからつまり、単に生徒だけが気にしてる問題じゃないってことで。

 でもねえ、いくら何でも、あんな突拍子もない……。

 おれ、噂には聞いたことがあったけど。

 呪われた三年三組、みたいな?

 ああ。──おまえは?

 ぜーんぜん知らなかった。

 まあ、基本的には“秘密”だっていうからな。むやみに他言したら悪いことが起こる、とかで。

 にしても、いきなりあんな話を聞かされても、普通はなかなか。

 信じられない、か。

 あなたは 信じるの?

 よく分からない。

 でしょう? 去年もおととしも、べつにそんな、〈災厄〉っていうような出来事はなかったし。

 おれたちが入学する前の年は、〈ある年〉だったそうだぜ。いろいろ物騒な事故や事件があったと。それでたくさん、人も……。

 死んだ、っていうよね。

 そう聞くとやっぱ、おっかないし。

 そりゃあね。でも……。

 でも?

 やっぱりそんな、“呪い”みたいなものが実際にあるなんて話、あまり真に受ける気にはなれないなぁ。

 その気持ちも分かるが。

 申し送りをした先輩たちも、何となく半信半疑っていう感じだったじゃない?

 そう見えたか。

 見えた、けど。

 ううむ。

だいたいね、二十九年前のミサキがどうのこうのっていうあの話自体が、何だか眉唾(まゆつば)ものっぽくない?

 ん……そうかな。

 卒業生が後輩を怖がらせるために続けられてきた恒例のお遊び、だったりして。

 ふんふん。まあ、本当にそれだけのことだったらいいんだが。

 今月末にまた、集まりがあるのよね。

 ああ。〈対策会議〉とか云ってたな。

 何だかもう、面倒くさいなぁ。

 大真面目な連中もいるからさ。

 サボったらまずいかな。

 まずそうな空気だったなあ。

 担任の先生も来るって話だっけ。

 そう云ってた気がする。

 うーん。仕方ないなぁ。

続きは書籍でお楽しみください

綾辻 行人(あやつじ ゆきと)
1960年京都市生まれ。京都大学教育学部卒業、同大学院博士後期課程修了。87年、大学院在学中に『十角館の殺人』でデビュー、新本格ミステリ・ムーヴメントの契機となる。92年、『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞。2009年発表の『Another』は本格ミステリとホラーを融合した傑作として絶賛を浴び、TVアニメーション、実写映画のW映像化も好評を博した。他に『Another エピソードS』『霧越邸殺人事件』『深泥丘奇談』など著書多数。18年度、第22回日本ミステリー文学大賞を受賞。

KADOKAWA カドブン
2023年7月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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