【話題の本】『レモンと殺人鬼』くわがきあゆ著

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■爽快と非道 不調和の妙

昨年の「第21回『このミステリーがすごい!』大賞」の文庫グランプリ受賞作。4月の刊行以来、23万部を突破した。高校の国語教師でもある著者が一昨年の作家デビュー後に同賞に応募し、選考委員の瀧井朝世氏が「二転三転四転五転の展開にねじ伏せられました」と高評価した。

10年前、通り魔に殺害された父親に続き、妹の妃奈まで遺体で発見された。妹が生前、保険金殺人に関与していたのではとの疑惑も浮上したため、姉の美桜が疑いを晴らそうと真相究明に乗り出す。レモンの意味するところは…。

人気イラストレーター雪下まゆさんの装画表紙に、さわやかさと非道を組み合わせた絶妙なタイトルが読者の興味を誘ったよう。さらに「このミス大賞・文庫グランプリ作品への期待感を持っていただいたのでは」と担当者。『チーム・バチスタの栄光』や『元彼の遺言状』など大賞受賞作には映像化された作品も多い。第19回から設けられた文庫グランプリも、一昨年の受賞作(『密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック』)が14万部超と、歴代受賞作の信頼感に支えられている。男女とも、40~60代を中心に幅広い世代が読んでいるという。(宝島社文庫・780円)

伊藤洋一

産経新聞
2023年9月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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