【話題の本】『平安貴族とは何か』倉本一宏著

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■日記で読む宮廷政治

花鳥風月をめで、恋と宴にうつつを抜かしていたとの印象を持たれがちな平安貴族。だが狭い宮廷で権力闘争を繰り広げた彼らの日常は、それほど気楽ではなかったようだ。

『源氏物語』作者の紫式部を主人公とした来年の大河ドラマ「光る君へ」の時代考証を務める歴史学者が、藤原道長『御堂(みどう)関白記』、藤原行成『権記(ごんき)』、藤原実資『小右記(しょうゆうき)』という3つの日記から、摂関政治最盛期の上級貴族の実像に迫る。

10月前半に初版1万部でスタートし、2週間で増刷が決定。現在1万3000部と好調だ。担当した田中遼さんは「毎年この時期、翌年の大河の時代考証担当者による新書を刊行しているが、例年よりも動きが早い。(人気の高い戦国時代や幕末と比べて)平安時代ということで市場的にはどうかと思っていたが、反響の大きさに驚いている」と話す。

当時の日記は、政務や儀式の方法を記録し、子孫に受け継ぐのが目的だった。しかし、たとえば自分が主宰した儀式への出欠や贈答品の内容を細かく書き記す道長の筆からは、誰が敵か味方かをかぎ分ける生々しい政治的センスがうかがえるという。公的な記述の中に、抑えられない心情や個性がにじむのを読み解いていくさまが面白い。(NHK出版新書・1023円)

磨井慎吾(文化部)

産経新聞
2023年11月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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