“学生みたいな社会人”に欠けている3つのコミュニケーション能力とは? 成果を出す人との違いを解説

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あなたの周りに、仕事でいつも成果を出している人はいませんか? そんな仕事ができる人は、社会人として“ごく当たり前”とされることほどしっかりとこなしています。今回は、コンサルタントとして1万人以上のビジネスパーソンと対峙してきた安達裕哉さんの著書『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』から「できる人」が身につけているコミュニケーションのスキルを紹介します。

学生と社会人で本質的に異なる「3つのポイント」

ある会社で「コミュニケーション力向上」の研修が行なわれていた。研修の目的は、新人に手っ取り早く「社会人のコミュニケーション力」をつけてもらうことにあった。「社会人のコミュニケーション」が「学生のコミュニケーション」と本質的に異なる点は何か? 次の3つに集約される。

1.上下関係が存在するコミュニケーション
2.受け手が中心のコミュニケーション
3.要求を含むコミュニケーション

本質が異なるので、「次に会う約束をする」という同じテーマで会話をしても、社会人と学生とでは会話の内容が変わる。

【学生のコミュニケーション】

A:明日ひま?
B:なんで?
A:オレ、明日空いてるからさ。
B:いや、忙しいよ。
A:冷たいなあ。
B:明後日までのレポート全然やってないんだよ。

【社会人のコミュニケーション】

C:明日の13時から、時間もらえるかな。スケジュール見たら、予定なしだったけど。
D:先程のミーティングで、13時から打ち合わせが入ってしまいましたが……緊急でしょうか?
C:前に同行してもらったお客さんから、ぜひ仕事を依頼したいと連絡があってね。担当してもらおうかと。
D:なるほど。少々お時間を頂戴していいでしょうか? 調整をいたします。
C:頼むよ。大事なお客さんだからね。
D:はい、調整ができましたら、すぐにご連絡いたします。

この2つの会話には、3つの本質的な違いが表れている。

まず、「1.上下関係が存在するコミュニケーション」。

学生同士のコミュニケーションは対等な関係であることが多い。だが、会社においては上下関係に基づくコミュニケーションが基本である。たとえば、上司と自分、顧客と自分などである。

次に、「2.受け手が中心のコミュニケーション」。

学生同士のコミュニケーションは基本的に発信者が主であり、受け手は従である。つまり、「自分が言いたいことを言い、話が合えばコミュニケーションが成立。合わなければ友人にならなければいい」というコミュニケーションである。しかし、会社においてはそうはいかない。相手が誰であろうと、受け手に合わせるコミュニケーション、すなわち受け手が中心のコミュニケーションの技術が必要とされる。

最後に、「3.要求を含むコミュニケーション」。

学生同士のコミュニケーションは、相手に対する要求を含まずともいい。要するに、人間関係を円滑にしさえすればいいのである。しかし、社会人のコミュニケーションはそれだけでは足りない。それは「相手に何らかの行動を起こしてもらうこと」を暗黙的に含む。「もっとやる気を出してほしい」「すぐに取りかかってほしい」「状況を報告してほしい」といった要求を常に含むのが、社会人のコミュニケーションである。

では、具体的にどのようなスキルが必要とされるのだろうか。

1 上下関係が存在するコミュニケーションの場合

■礼儀
中国の思想家・孔子は「礼」を「相手への思いやりを形にしたもの」と定義した。思いやりは形にしなければ、相手に伝わらない。したがって、コミュニケーションの前提として相手への気づかいを形にした「礼」が必要である。

■情報提供
上司とのコミュニケーションをうまく図るには、「情報提供者」という役割を負うことがもっとも効果的である。意思決定するのは上司の役割であるが、そのためには自分の持っている情報を効果的に伝える必要がある。

■寛容
組織のなかでうまくやれるかどうかは、上司にどれだけ寛容になれるかにかかっていると言っても過言ではない。上司も人間的な弱さを持っているし、間違いを犯すこともある。そういった上司を批判するのは簡単だが、批判はコミュニケーションをとりづらくする。反対に、それらを許す寛容さはコミュニケーションの要となる。

2 受け手が中心のコミュニケーションの場合

■共通言語
会話は、相手が理解できる言葉を慎重に選択する必要がある。言葉の意味だけではなく、言葉が想起させるバックグラウンドも含めた、相手との共有度がコミュニケーションの質を決める。 とくに報告書や提案書などの言葉は、慎重に慎重を重ねて吟味すること。何気なく使った言葉が誤解を招いてはせっかくのいい内容も台なしである。たとえば、提案書において「○○例(企画例など)」という言葉は使わないようにする。 顧客によっては「例」という言葉に反応し、上から目線だと感じたり、すでに決まった施策であると感じたりする人もいるからだ。この場合、「例」ではなく、「案」という言葉を使うようにする。

■質問
受け手が欲している情報が何かを知らなければ、効果的なコミュニケーションは望むべくもない。相手は自分の聞きたいことしか聞こえないのである。だが、相手が欲している情報を正確に予想するのは非常に困難だ。 それゆえ、どのような情報を欲しているかを常に相手に確認しながらコミュニケーション をとらなくてはならない。合言葉は「自分が発信する前に聴く」 。

■簡潔さ
言葉はできるだけ短く、簡潔に、明瞭に。必要以上の情報が言葉のなかに含まれていれば、相手はそのノイズを取り去るためにリソースを割かなければならないからだ。 長い話が嫌われるのは学生も一緒であるが、社会人の場合、長い話はそもそも聞いてもらうことすらできない。無駄を削ぎ落とした表現を心がけよう。

3 要求を含むコミュニケーションの場合

■感情の理解
「要求に対する納得感は、論理によって喚起されるものではなく、感情によって喚起されるもの」と理解しよう。あなたの言うことがいくら正しくても、相手の感情が拒否してしまえばそれでコミュニケーションは断絶する。 論理に重ねて、感情を訴えよう。そのためには、まず自分の気持ちを語るのが有効だ。「うれしい」「楽しい」「期待している」「信頼できる」などの気持ちを示す表現を使い論理を強化しよう。

■価値観の重視
相手の価値観は、一緒に働いている人物であっても自分と異なると心得る。学生のころとは違い、相手と共有するバックグラウンドがかなり異なることが、ふつうであるからだ。 何に重きを置く人物なのか、何を重要視する人物なのかを理解し、自分の要求がそれに合致していることを示すことが大切だ。

■時間
要求を含むコミュニケーションは手軽に済ませるものではない。時には辛抱強く相手の行動の転換を待たなければならないときもある。成果を出すことをあせってインスタントな手法に頼らず、これまでに紹介したコミュニケーションの原則を守ること。

安達裕哉 (あだち ゆうや)
1975年東京都生まれ。筑波大学環境科学研究科修了。Deloitteで12年間経営コンサルティングに従事し、社内ベンチャーの立ち上げにも参画。東京支社長、大阪支社長を歴任。1000社以上に IT・人事のアドバイザリーサービスを提供し、1万人以上のビジネスパーソンに会う。その後独立し、オウンドメディア支援の「ティネクト株式会社」を設立。コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行なう。自身が運営するメディア「Books&Apps」は月間200万PVを超え、ソーシャルシェア数千以上のヒット記事を毎月のように公開。「ビジネスパーソンを励ますwebメディア」としておもしろく役立つコンテンツを届け続けている。著書に『仕事で必要な「本当のコミュニケーション能力」はどう身につければいいのか?』(日本実業出版社)、『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)などがある。

安達裕哉(コンサルタント)

日本実業出版社
2023年11月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

日本実業出版社

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