『流れる』
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平山書店「梨花が置屋の女中で見た世界」【書店員レビュー】
[レビュアー] 平山書店(書店員)
四十過ぎの中年女性梨花は、芸者置屋の世界に魅力を感じ、住み込みの女中になることを決心する。狭いがゆえにすぐ底まで知り尽くせそうな気がする。そして、この世界にいるとめまぐるしくいろんなことが起きそうな気がする。しろうとの世界は退屈で広すぎる。広すぎて不安である。それが梨花の理由だった。梨花は二日間の間に、傍観者的立場から主体的なかかわりをもつ存在へとその身を移した。この梨花が置屋の女中を選んだ理由の場面は、うっかり読み飛ばしてしまいかねないほど、取るに足らないことに見えるけれども、味わいのある示唆を含んでいる。梨花が広い世界よりも、狭く不自由な世界を選んだからである。