『リメイクの日本文学史』
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文学は常に書き換えられている
[レビュアー] 図書新聞
文学作品のリメイク現象を多面的に考察。本歌取りや翻案、自筆原稿の推敲などの実例を挙げながら、文学の懐の深さや言語活動のダイナミズムを味わわせてくれる。例えば井伏鱒二『山椒魚』のように、単なる語の置き換えではなくて、終わりの箇所が大幅に書き換えられたバージョン違いが複数存在する作品もある。このように作品は常に書き換え可能性に晒されている。ある作品に接した際に、「これはAではなくてBという表現を使うべきではないか」と思うことがあるだろう。リメイクの欲望は、誰にでもある。それはまた「これが決定稿」とすることの難しさの表れでもある。つまりリメイク可能性とは、メイク不可能性ではないか。そういう目線で文学作品を読むと、違った景色が見えてくるはずだ。(4・15刊、二三八頁・本体八〇〇円・平凡社新書)