『15歳の被爆者』
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クラウドファンディングで実現 ナガサキ原爆の「歴史」を紡ぐ異色の親子インタビュー
[レビュアー] キリスト新聞社
「学徒動員」中に長崎の爆心地から1.2kmで被爆しながら戦後を生き延び、28年間の教員生活を経て、被爆者がいなくなる日が近いとの危惧から80代でブログを始めた女性。そんな被爆者「一世」の母をもつ批評家の切通理作氏が、記憶の継承者としてインタビューした異色の対談本。
『ゴジラ』監督の本多猪四郎、『ウルトラマン』脚本家の金城哲夫、上原正三など、戦争を経験したサブカルチャーの担い手が作品に込めたメッセージを読み解いてきた同氏。
数ある手記とは趣が異なり、戦後から震災を経て今日に至るまで、一人の主権者、教師、親としての等身大の女性が生きた歴史を精細に描く。一面的な被爆者像を覆し、8月9日の原爆投下も15日の「玉音放送」も、まったく異なる体験として記憶する人々がいるという事実に立ち戻る。
著者とは対照的に、被爆者運動に熱心に関わり、後に牧師と結婚した妹・晴子との対比も興味深い。
クラウドファンディングの呼びかけに応じた170人超の賛同者によって作られたことも、本書の特徴。