ノートは「1軍」と「2軍」に分けよう。成果を10倍にするメモの取り方とは?

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超ノート術 成果を10倍にするメモの書き方

『超ノート術 成果を10倍にするメモの書き方』

著者
佐藤 ねじ [著]
出版社
日経BP
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784822251802
発売日
2016/10/15
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

ノートは「1軍」と「2軍」に分けよう。成果を10倍にするメモの取り方とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

超ノート術 成果を10倍にするメモの書き方』(佐藤ねじ著、日経BP社)の著者は、インターネットのコンテンツやスマートフォンのアプリなどをつくっているというアートディレクター/プランナー。いかにもスマホやタブレット端末などを駆使していそうなイメージがありますが、実際には手書きメモを積極的に活用しているのだそうです。

僕は、手書きメモほど万能で強力な武器はない、と確信しています。
仕事の打ち合わせメモや、手帳に書いた日記、マンガや映画の感想…そんな雑多な記録から、自分の仕事で最も重要なもの、つまりアウトプットを劇的に良くする方法があるのです。
(「はじめに」より)

仕事柄、著者にとってもっとも重要なのは「おもしろいコンテンツの企画」ですが、ノートの使い方を全面的に見なおすことにより、アイデアがどんどん出せるようになったのだといいます。そして、手書きメモを活用したそんな方法は、企画を考える仕事以外の、あらゆる仕事にも役立てることが可能だというのです。そこで本書においては、ビジネスに役立つノートの活用法を明かしているということ。

第1章「手書きメモからヒットを生み出す」から、その基本的な考え方を探ってみたいと思います。

メモしないと忘れるアイデアはたいしたことない?

社会人として働きはじめたとき、著者には戸惑いを感じたことがあったのだそうです。それは、そんなに努力しているようには見えないのに、いきなり信じられないような成果を出してしまう天才肌の人が会社にはいるということ。

ところが著者は天才肌とは正反対のコツコツ派だったため、そういう人に脅威を覚えたというのです。しかも中高生のころからメモ魔で、思いついたことがあるとすぐノートにメモしていたため、「メモを取らないと忘れてしまうアイデアなんて、たいしたアイデアじゃないんだ」と断言するクリエイターがいることにもショックを受けたのだとか。

たしかに優秀な映画の予告編やテレビCMには、一度見ただけで忘れられなくなるほどのインパクトがあるものです。別にメモを取らなくても、「あの○○はすごいんだよ!」と人に話すこともできるでしょう。だからきっと、一部のすごいアイデアは、ノートにメモしなくても、ずっと憶えておくことが可能。著者も、それは認めています。

しかし、「みんながそんなアイデアばかり提案していたら、シンプルで憶えやすい、ビッグなアイデアの企画ばかりになってしまう。それではおもしろくない」とも主張しているのです。もっと小さなアイデアや、日常の忘れてしまいそうな発見を活かす方法もあるはずだということ。そこで、「ノート活用術」を生み出したというのです。

僕のノート活用術は、いわばコツコツ派にとっての画期的な武器のようなものです。毎日コツコツと、自分が気になったちょっとしたことをメモして、それをもとに、人が話題にしたくなるような、オリジナリティのある企画を立てることができます。(15ページより)

なお、逆説的ではあるものの、このやり方は「伸び悩む天才肌の人」にも役立つのだともいいます。なぜなら、天才肌の人が無意識のうちにやっていた「アイデアをひらめくプロセス」を、ノートというツールを使って意識的に行うものだから。(12ページより)

飲み会でもメモを取る理由

会社に入るとまず、「打ち合わせのときはメモを取ること」を教わります。当然のことながらそれは、自分がやらなければならないことを忘れないようにしておくため。そんなこともあり打ち合わせや会議の席でメモを取る人は多いはずですが、「それ以外のとき」にメモを活用する人はとても少ない。そう指摘する著者は、あらゆるシチュエーションでメモを取るのだといいます。

なぜなら、それらのメモが、あとで自分の仕事の参考になるかもしれないから。だからデジタル・コンテンツだけではなく、映画、音楽、雑誌や本やマンガ、果ては自分の子どもの言葉まで、気づいたさまざまなことをメモするのだそうです。それらに一貫しているのは、「あとで自分が企画を考えるとき参考にする」ということ。そのメモをなにに活かすのかアウトプットが決まっているということで、それが著者の場合は「企画」であるわけです。

このように、僕のノート術では、日々気になったことをノートにメモするのが最初のステップになります。ポイントは、メモを何に活かすのかをあらかじめ決めておき、そのために自分の心に引っかかったものをメモするということです。なぜノートからアウトプットしたいものをあらかじめ決めておくのかというと、もちろん効率がいいからでもあるのですが、一番の理由は、そうしたほうが長続きするからなのです。(18ページより)

アウトプットを具体的に決めると、あとからメモを見返すのが楽になるとか。そしてメモを見返していると、だんだん自分が心を動かされるポイントがわかるようになるといいます。つまり、自分の好みのパターンが、メモのなかから見えてくるということ。そうした好みを把握しておくことが、オリジナリティのある企画を立てるうえで重要になってくるというのです。(16ページより)

選りすぐりのネタを「1軍ノート」に集める

著者のノート活用術には、大きく3つのステップがあるのだそうです。

1 毎日コツコツと、気になったことをノートにメモする
2 そのなかから、選りすぐりのメモだけを特別なノートに書き写す
3 選ばれたメモは頻繁に見返し、アウトプットに活用する
(21ページより)

最初のステップについては、なにをアウトプットしたいのかをあらかじめ決めておき、そのために気になったことをメモするのがポイント。ただし著者は、そのコツがつかめるようになるまでにはかなりの試行錯誤を繰り返したのだといいます。「なんのためのメモをするのか」がはっきりわかっていなかったため、かなりムダなことをしていたというのです。そればかりか、メモを仕事に活かそうと、膨大なメモを整理することに躍起になっていたのだそう。

そんな不毛なメモ整理から脱却できたのは、2の「選りすぐりのメモだけを特別なノートに書き写す」というステップを見つけることができたから。具体的には、選りすぐりのおもしろいトピックスだけを集めた「1軍ノート」をつくっておき、企画のネタとして使うということ。これは著者の言葉を借りれば、ミュージシャンのヒット曲だけを集めたベストアルバムをつくるようなもの。

これに対して、普段のメモを取るノートのことを「2軍ノート」と呼ぶそうです。「2軍」と呼ぶことで書き込むときの心理的なハードルが下がり、「たいした内容じゃないけど、とりあえず書いておくか」という気持ちになるというのです。しかも、そんな気持ちで書いた他愛もないメモが、あとで見返すとおもしろかったりするもの。著者は実際、ノートを買ってくると、その表紙に「1軍ノート」「2軍ノート」とまず書くのだといいます。まずは形から入るということ。

なお、メモを2軍ノートから1軍ノートへ書き写すとき、著者はある工夫をするそうです。メモをそのまま書き写すのではなく、そこに書かれている内容をふくらませ、アイデアとしてよりおもしろくなるように、一手間かけるというのです。

ただ単にメモを書き写すのではなく、アイデアとして膨らませる。これは、発想オタクである僕にとって、とても楽しい作業です。最初にメモしたときは、あとで役に立つとは思わなかった何気ない走り書きでも、「ひょっとして、別の何かと組み合わせると…」「違うシチュエーションに転用すると…」といった具合に工夫するだけで、まだ誰も思いついていないアイデアに変身することがあるのです。(25ページより)

著者がこうしてひと手間かけるのは、なるべく「オリジナリティの高いアイデア」を見つけたいから。SNSに大量の情報があふれ、すぐに消費されていく現代においては、「心に残る」ということが重要なのだそうです。(21ページより)

2章以降では、具体的な図版を交えながら、ノートのつくり方が解説されます。具体的でわかりやすいので、きっと自分のものにできるはず。仕事であと1ステップ上に行きたいという方は、ぜひ手にとってみてください。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2016年11月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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