『旅人よ どの街で死ぬか。』伊集院静著
[レビュアー] 産経新聞社
写真付きエッセー集のテーマは『死』。後向きで暗いテーマに思えるが、著者の哲学や宗教観が織り交ぜられ、読み応えは十分だ。
パリ、バルセロナ、グラスゴー、ダブリン、上海…。著者が死ぬ前にどうしても訪れておきたかったという世界の街をさまよい、酒、ギャンブル、女、人生、そして、生と死に思いをはせる。
今どきの大人が軟弱で、すぐにつるみたがるのは「孤」を知らないから、それを知るには旅をすることだという。弟や前妻を失い、死や別れに密接であったろう著者の文章には寂寥(せきりょう)感が漂う。「どの街で死ぬか」とは格好良すぎる。(集英社、1400円+税)