「 楽しくない会議」を楽しくするための基本を知ろう

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書いて使う 会議を変えるノート

『書いて使う 会議を変えるノート』

著者
三澤直加 [著]/杉田麻耶 [著]/株式会社グラグリッド [著]/株式会社アイ・エム・ジェイ [著]/太田文明 [監修]/赤石あずさ [監修]
出版社
マイナビ出版
ISBN
9784839959081
発売日
2017/06/16
価格
1,980円(税込)

「 楽しくない会議」を楽しくするための基本を知ろう

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「会議」をテーマにした書籍は数あれど、『書いて使う 会議を変えるノート』(三澤直加、杉田麻耶著、赤石あずさ編集協力、太田文明監修、マイナビ出版)は少しばかり異質かもしれません。なぜならサブタイトルからも想像できるとおり、「書いて使う」ことを目的としているのですから。

会議こそ楽しくない仕事の代表格かもしれません。

そして、その楽しくない会議は、私の経験からするときっと「うまくいっていない仕事」なのです。

本書の執筆チームはその「楽しくない理由」にまっすぐに向き合い、ありふれた業務である「会議」という営みのありかたを変えてみることで「楽しく」できないか、もっと創造的な仕事にできないかという難題に立ち向かっています。

まずは身近な機会である「会議」をちょっと変えてみることで「楽しさの効果」を手っ取り早く実感していただきたいというのが、本書に託す私の想いです。

楽しさが、人の「創造性」を最大化します。

そして「創造性」こそがこれからの仕事において必要不可欠な駆動力であり、栄養素なのです。(「はじめに」より)

つまり、そのためにノートを有効活用しようということが、本書のコンセプトなのです。しかしノートの効能については実際に書き込んでみていただく以外に実感できないはずので、きょうは会議のベーシックな部分を再確認した1章「会議のきほん チームで仕事をしていくための会議・ミーティングの基本を知る」を確認してみましょう。

うまくいく会議って?

そもそも、「うまくいく会議」とはどのようなものなのでしょうか? なにを目指して会議を計画・進行させればよいのでしょうか? この問いに対する答えとして、著者は以下のような「うまくいく会議の3つの共通点」を指摘しています。

1. 全員が目的を理解している

2. 個々の能力がチーム力として発揮されている

3. 会議でどのように発言・思考したら良いのかが示され、支援されている

(12ページより)

1.「全員が目的を理解している」については、会議に参加している全員がプロジェクトの目的とゴールを理解し、そのうえで毎回の会議の目的を把握している状態が理想。特にプロジェクトが始まったときに、「どこまで理解しているか」が鍵になるというのです。

具体的には、「なぜ、それをすべきか?」という理由を理解できていることが重要。やることがわかっていても理由がわからなければ、状況が変わったとき、やることの方向性や優先度の判断ができなくなってしまうわけです。また、ひとりひとりがやり方を工夫していくためにも、「やる理由」をしっかり共有しておくことが必要だということ。

さらには目の前にいるチーム内の目的だけではなく、そこにいないお客さまや間接的に関わる人たち全員に通じるような目的を意識すべきだといいます。できるだけ広い視点で捉えられるようになると、自分に求められることも具体的にわかってくるようになるから。

2.「個々の能力がチーム力として発揮されている」は、参加者それぞれが持つ能力と人柄が、会議のなかでうまく作用している状態が理想。たとえば元気のあるムードメーカーがいる場合は、会議の冒頭に「最近あったこと」などを話してもらえば、場を和ませてもらうことができるわけです。初めて参加するメンバーがいる場合には、最初に感じた違和感を大切に、疑問点をどんどん出してもらうことも可能になるはず。

いずれにしても、会議はチームで行うもの。自分のことだけではなく、仲間のことを理解して関わることによって、「自分がどう役に立てるのか」がわかるということです。

そして3.「会議でどのように発言・思考したら良いのかが示され、支援されている」。会議でよくある悩みが、「発言しない人がいる/自分が発言してよいかわからない」というもの。しかし失敗を恐れて発言しなければ、問題点がそのままになってしまい、よい仕事をすることは不可能になります。

それを回避するために重要なのは、会議を進行する人が「参加者が会議でどのように振る舞ってほしいのかを提示する」こと。「なんでも自由に発言してほしい」「いまは聞いてほしい」など、具体的に伝えることが大切だという考え方です。

「うまくいく会議」を繰り返し行うことによって、チームの状況を把握し、チームを動かし、チームが自発的に動くような状況が生まれていくのだといいます。よい会議をつくることは、よいプロダクト・サービスをつくること、よい仕事をつくること、よい組織をつくることにつながっていくというのです。(12ページより)

会議の目的を把握しよう

会議は、「定例だから」「決まりごとだから」やるものなのでしょうか? 当然ながら、会議はプロジェクトのゴールを達成するために必要なことを検討し、考え方を合わせ、前進するために行われるものであるはずです。そこで効率的に会議をするためにも、毎回「なんのためにやる会議なのか」を把握しておくことが大切。

とはいえ、会議の目的はさまざま。それどころか、プロジェクトの内容や体制、タイミングによっても大きく異なるでしょう。そこで本書では「どのような会議があるのか」「典型的なケースを確認しつつ、それぞれの会議の目的について解説しています。その基本は、下記のようにプロジェクト全体の流れを「起案」「計画」「実行」「内省」という4つの工程で捉えることだそうです。

・ケース1:企業内でトップから命令がくるプロジェクトでよくある事例

たとえば会社のなかで上層部の決定によって命令が下りてくるようなプロジェクトの場合、事業責任者を中心としたリーダーが集まって戦略を立てる会議からスタートするもの。そののち担当が決まり、そこで具体的な方法や手段を計画する会議が行われるわけです。ここでの目的は、戦略会議で決定したことに対して合理的な計画を立てること。

そして実際に計画が受理されたあと、実行メンバーが集まってキックオフ会議が開かれます。戦略会議や計画会議での内容をしっかり伝達し、やる気を高めることが目的。そして参加メンバーの顔合わせとなるキックオフ会議を経て実行されるわけです。やるべきことを推し進めながら、検討会議が何度も行われることに。

そしてプロジェクトのゴールが達成されたあとは、上層部や関係者へ成果報告するための会議が行われることになるでしょう。ここでは自分たちの成果をアピールし、次のアクションへのヒントを見つけることが目的になるといいます。

・ケース2:社外のメンバーと新しいプロジェクトを立ち上げる事例

社外の人と新しいプロジェクトを立ち上げようという場合、当然ながら会議は、お互いのことを知ることからスタートします。「なにが求められているのか」「なにができるのか」を確認しつつ、お互いに最良の関係性を探り合うような会議だといえるでしょう。仕事の内容が決まっていないだけに、よりよい落としどころを見つけながらも、プロジェクトのゴールを明確にすることが会議の目的になります。

続いてプロジェクトが立ち上がったあとは、具体的な手順や方法を計画する会議が行われることに。個人の能力は不安要素を出し合い、具体的で実現可能性の高い計画を立てるわけです。そしてその後は、参加メンバーの顔合わせとなるキックオフ会議を経て実行。

やるべきことを推し進めながら、未検討の部分や心配事が出てきたら、その都度解消していくような検討会議が何度も行われるはず。その際の目的は、チームメンバーの状況をしっかり把握しつつ、よりゴールに近づけるための方法を検討すること。そして最後に、プロジェクトのゴールにたどりついたら成果を確かめ合い、学びを生かすための会議が行われるわけです。

このように、会議の目的はプロジェクトの流れとともに刻々と変化するもの。そして会議の目的を把握するためには、その会議がプロジェクトの進行上のどの段階にいるのかを知ることが近道になると著者はいいます。自分たちの会議がどこに位置づけられているのかを考えながら、目的を再確認することが大切だということです。(16ページより)

仲間を知ろう

「うまくいく会議」を行うにはチーム力が不可欠。そしてチーム力を高めるためには、「仲間に興味を持ち、もっと知ること」からはじめることが大切。同じ時間を過ごす仲間なのだから、せめて顔と名前だけでも覚えておきたいということです。ちなみに著者は、以下のような「参加者の把握のポイント」を重視しているといいます。

・その1:参加者の特徴を記録しよう!

名前/所属/肩書/このプロジェクトでどんな役割を担う人か/どんな見た目なのか、などをメモ。見た目については「メガネ」「短髪」「チェックの服」「笑顔がきれい」などなんでもOK。次に会ったときに思い出しやすくなるための材料を、たくさん残しておくということです。文章だけでなく、絵としてメモしておくと、より覚えやすくなるとか。

・ その2:参加者を知るために質問しよう!

これまで手がけてきた仕事や使えるアプリケーション、得意分野などを確認しておくと、いざというときにお願いしやすくなる可能性が。また仕事に関することだけでなく、趣味や時間のつかい方などについても質問してみるといいそうです。その人の考え方の基準を知ることになり、議論がしやすくなるわけです。特にプロジェクトが始まる初対面時には、全員がゆっくりと自己紹介しあえる時間をつくることが大切。(20ページより)

2章以降では、「会議を変えるノート」の使い方が具体的に解説されています。そのため、無理なく理解することができるはず。会議を変えるためのヒントや具体的な事例も盛り込まれているので、本書を有効活用すれば、なにかと頭の痛かった会議のクオリティを向上させることができそうです。

メディアジーン lifehacker
2017年6月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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