組織における「信頼」とは何か? 謙虚さを忘れないリーダーになる方法

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信頼の原則

『信頼の原則』

著者
ジョエル・ピーターソン [著]/デイビッド・A・カプラン [著]/田辺 希久子 [訳]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784478101438
発売日
2017/08/25
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

組織における「信頼」とは何か? 謙虚さを忘れないリーダーになる方法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

タイトルからも想像できるとおり、『信頼の原則――最高の組織をつくる10のルール』(ジョエル・ピーターソン、デイビッド・A・カプラン著、田辺希久子訳、ダイヤモンド社)が焦点を当てているのは「組織における信頼」。ジェットブルー航空会長、スタンフォード大学経営大学院顧問教授である著者は、このテーマについて次のように記しています。

信頼とは目をつぶって身を投げるようなもの、他人に権限を明け渡すことにほかならないと、身をもって学んできたことも確かである。苦い経験を通して覚えたのは、どんな人間なら信頼してよいかを見分けること、そして信頼溢れる文化の構築に徹底してこだわるということだ。信頼はダイナミックなプロセスであり、ルールを守らせ、結果を評価し、違反があれば修復するべきものだとも学んだ。むろん私は、何でも善意に受け取るお人よしの楽観論者ではない。リスクは完全に排除できないことはわかっている。信頼には失敗がつきものなのだ。(「はじめに」より)

失敗がつきものなのに、なぜ信頼するのか? この問いに対して著者は、「ほとんどの場合、それはうまくいくから」だと結論づけています。自分だけでなく相手も得するように協力したほうが、心配の種を探して回るよりも多くを成し遂げられ、調和と協力の世界で働くほうがはるかに幸福だという発想。そして、このような考え方に基づく本書は、10種の「ルール」によって構成されています。

そのなかから、きょうは「謙虚さ」について触れた項目をクローズアップしてみましょう。

謙虚さを忘れない

著者によれば、自己顕示欲の強い権力の亡者たちは、組織の信頼を破壊する人々。一方、高信頼リーダーは従業員を導き、資産を守り、意思決定を導く代理人としての役割を大切にするのだそうです。また、組織を存在せしめている価値観とビジョンを守り抜くことにも尽力するものですが、そのために必要なのが謙虚さだというのです。

強力なリーダーが、組織のあらゆる部門、あらゆる人々を自分が動かしているように感じるのは当然のこと。しかし、そのような傲慢さは、信頼にとっては致命的。なぜなら自分中心のリーダーは、自分が賢いということをアピールするのに夢中で、組織全体が危機に荒らされていることに気づかないから。

逆にいえば、本当の意味での自己利益とはなんなのかを考え、謙虚さに思い至ったリーダーだけが、永続的な組織を構築できるということ。フランス国王ルイ14世のものとされる「朕は国家なり」という言葉は、持続可能な統治の原理にはなり得ないもの。しかしその一方、謙虚さがあれば、リーダーは自分なきあとの未来を築くことができるというのです。

高信頼組織はルイ14世のような傲慢な人間を採用しないし、従業員を二級市民のように扱うこともない。たとえ役割や地位が異なるとしても、経営幹部でも名門大出身でもなく、黙々と働くだけの声なき人々まで尊厳を持って扱うのである。高信頼組織のCEOは、受付係を毎日すれ違う名もない「助手」とみるだろうか。それともトップに丁重に扱われた経験をバネに、やがて出世していく可能性を秘めたチームメンバーと見るだろうか。

高信頼リーダーは、すべての従業員が偉大さに至る途上にあると考える。彼らが思い描くのは、地方の食品店クローガーの倉庫係から出発し、36年後にCEOとなったロドニー・マクマレンのことなのかもしれない。(131ページより)

ゆえに階級制度を残したまま、高信頼組織を築くことは不可能。企業内のチームにはさまざまな職域があり、さまざまな仕事をしていますが、1人たりとも成功に欠かすことはできないわけです。いいかえれば、組織のミッション遂行において、重要でない人間など1人もいないということ。つまり高信頼集団を生み出すためには、ひとりひとりが大切であることを、リーダーが表明しなければならないわけです。

なお矛盾しているように思われるかもしれませんが、高信頼リーダーにはひとつの資格があるのだと著者はいいます。自分自身を不可欠の、なくてはならない存在だと見なせないと、有能なリーダーとはいえないというのです。ただし重要なのは、それを口に出さないこと。もっといえば、「そう信じ込まないこと」が大切なのだそうです。

自我を抑えなければ、必ずやってくる失敗から学ぶことはできません。リーダーが謙虚に学び、成長し、仲間とともに試練を乗り切ることができなければ、誰も信頼してはくれないということです。

謙虚さを身につけるための5つのポイント

リーダーが信頼の土台としての謙虚さを身につけるためには、以下の5つのポイントを押さえることが大切なのだそうです。ひとつひとつを確認してみましょう。

ポイント1 「自分よりミッションが大事」と考える

自分がリーダーだからといって、自分と会社を同一視するべからず。たしかに優れた組織を生み出すのは偉大な人々ですが、偉大な組織が継続するのは、個人を超越した価値観があればこそだから。

ポイント2 組織の歴史を振り返る

これには創業者、開発者などによる卓越した業績も含まれるそうです。そこで著者は、会社と、そこで働いた人々の歴史を盛り込んだプレートを壁にかけておくことを勧めています。そうすればいつでも、組織の歴史と、その過程で努力してきた人たちの姿をイメージすることができるから。

ポイント3 優れた業績を皆の前で表彰する

特に重要なのは、見えないところで業務の遂行を支えるヒーローたち。どんな組織にもそんなタイプは存在しますが、決して目立つことがないのも事実。そこで機会をとらえて彼らを賞賛し、感謝を表すことも大切。感謝することは、信頼の必須要素なのだと著者は主張しています。

ポイント4 具体的に感謝する

感謝する際には、「具体的であること」が意味を持つのだと著者。単に「素晴らしい仕事をしてくれてありがとう」で済ませるのではなく、具体的な部分にも触れることが重要だということです。そしてもうひとつ、仲間の前でほめることにも大きな意味があるといいます。そのためにリーダーは、組織のなかで日々、当たり前のようになされている仕事を把握するように努めなければならないわけです。

ポイント5 仕事以外で有意義なイベントを催す

ピクニック、ゴルフ、野球、奉仕活動などは、多くの企業がグループ内の懇親を深めるために助成している伝統的な行事の一例。そしてここでは、ハリケーンが来襲した際にジェットブルー航空が行ったことが紹介されています。「サンディ」というハリケーンに襲われたとき、乗務員たちが2万5000食の温かい食事を被災者に配ったというのです。たとえばこれも、「有意義なイベント」のひとつだという考え方。

(以上135〜136ページを要約)

高信頼文化を長続きさせるには、組織全体の成功と幸福、そしてそれ以上に、組織に活力と生命を与える個々のチームメンバーの成功と幸福を大切にしなければいけないと著者はいいます。いわば高信頼リーダーになるということは、自己中心的になることではなく、自分自身が話の中心に立つということだということ。(128ページより)

「信頼の原則」を理解し、応用することで、私たちは信頼できる人間、信頼できるリーダー、そして他者を信頼することのできる人間になることが可能になる。(「序文 スティーヴン・M・R・コヴィ」より)

作家のスティーヴン・M・R・コヴィーは、本書に寄せた序文にこう記しています。この言葉が決して嘘でないことは、本書を読み終えた時点できっと実感できるはずです。

メディアジーン lifehacker
2017年9月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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