19世紀末、作品の翻訳からトルストイと個人的関係を築いたアイルランド人が描く文豪の伝記。著者はポーツマス講和会議の際のロシア側ブレーンでもあった。
トルストイはロシア飢饉(ききん)に関する論文を書いたが、帝政ロシアでは発禁処分を受け、国外で発表しようとする。著者はそれを手助けした。しかし、家族へ累が及ぶことを恐れた夫人の工作で新聞各紙を巻き込む騒動へと発展、人道主義者として世界的名声を得ていた文豪も動揺を隠せなかった。
知られざるそんな逸話から描き出される新たな肖像は、読者に新鮮な驚きを与えるだろう。(成文社・3400円+税)
-
2017年10月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです