『卑劣犯』
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今回のワルはシリーズ史上最強!
[レビュアー] 笹本稜平(作家)
素行調査官シリーズ第四作目『卑劣犯』がいよいよ刊行。前作『漏洩』から五年余り。きょうは本郷(ほんごう)を始め、満を持して登場したメインキャラクターたちの座談会だ。
「こんども意地を見せられたな。『警察のなかの警察』のはずの監察が『警察のための警察』になっちゃお終(しま)いだから」
そう胸を張るのは首席監察官の入江(いりえ)。末は警察庁長官か警視総監と、キャリアとしての野心は旺盛だが、シリーズ第一作以来、数々の大事件を解決したにも拘(かかわ)らず、あるいはそれが祟ってか、いまも出世の声がかからない。
「でも今回のワルはシリーズ史上最強だったよ。おまえだって、おれの最後の閃(ひらめ)きがなかったら、長官や総監どころか、首が飛んでも不思議じゃない相手だったから」
本郷が口を挟む。入江とは高校のクラスメートで、入江の引きで裏口入庁した元私立探偵。身分では天と地ほどの差の巡査部長だが、いまも入江にはため口が利ける。
「おれの貢献も忘れちゃいけないよ。重要な糸口は、すべておれの鼻で嗅ぎ出したようなもんじゃないの」
捜査にかこつけて温泉に入り浸り、結果、運良く棚ぼたが続いただけなのに、北本(きたもと)は自慢げに小鼻を膨らます。こちらは定年も視野に入った万年巡査部長。段ボール箱に入れるクッション材のように、それでもなぜかいないと落ち着かない。
「まさに官民協力の賜(たまもの)よ。凶悪殺人犯を追うなんて私立探偵冥利に尽きるから、また手が足りないときは指名してね」
そう言う沙緒里(さおり)は、本郷の古巣の探偵事務所長の娘で共同経営者。根っからの探偵小説マニアで、ときどきサム・スペードやフィリップ・マーロウになりきってしまう癖がある。
そんな面々が挑んだのは、児童ポルノの捜査に絡む殺人事件。殺されたのは警視庁の刑事で、その容疑者は警視庁の上級幹部。執拗な捜査妨害で迷宮入り寸前の事件を本郷たちはどう解決するのか。お馴染みのチームの活躍に乞うご期待。