『カヨが聞いた声』
- 著者
- おおぎやなぎ ちか [著]/中川 学 [イラスト]
- 出版社
- くもん出版
- ジャンル
- 文学/日本文学、小説・物語
- ISBN
- 9784774326993
- 発売日
- 2017/09/04
- 価格
- 1,100円(税込)
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<東北の本棚>災厄にどう向き合うか
[レビュアー] 河北新報
東京都青梅市の御岳山(みたけさん)にはオオカミを守り神とする信仰が残る。秋田市出身の児童文学作家がオオカミ信仰をベースとし、疫病に見舞われた人々の生きざまを小説にした。
幕末、山の近くに住む娘カヨは顔立ちに悩み、美しい妹と比べられることを嫌った。村で疱瘡(ほうそう)(天然痘)が流行し、家族で妹だけが発病してしまう。
治療法がない病は死を意味した。カヨは裏山のほこらに向かい、大神さまに回復を祈る。妹は奇跡的に助かるが、カヨは「妹の顔にあばたが残っても構わない」と考えてしまった自分を責める。
理不尽な災いとどう向き合うか。信仰は救いになるのか。そもそも人間の生い立ちは不公平にできているのか。本書は学問を教えてくれる優しい師匠、生きることに精いっぱいの「おとっつあん」や「おっかさん」との関係を交え、多くの問いを投げ掛ける。
葛藤を抱くのは自分だけではない。誰もが悩み苦しんでいることが次第に明かされる。カヨが生きがいを見いだし、人生を全うする姿に救いがある。
太平洋戦争と東日本大震災をテーマとする「オオカミのお札シリーズ」。第2、3巻も出版された。各巻とも懐かしさと温かみのあるイラストを添える。
くもん出版03(6836)0301=1080円。