恋愛、SF、落語まで、女同士の「濃い」物語集『完璧じゃない、あたしたち』 王谷晶

レビュー

8
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完璧じゃない、あたしたち

『完璧じゃない、あたしたち』

著者
王谷 晶 [著]
出版社
ポプラ社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784591155363
発売日
2018/01/26
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

恋愛、SF、落語まで、女同士の「濃い」物語集

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 女と女だけの物語が23編。この本を説明するとそれだけになってしまう。一作はショートショートといってもいい長さなのに、とにかく全編「濃い」。
 設定はすべて違っている。友達、仕事仲間、先輩と後輩、姉妹、親子、恋人。現代小説もあればSFも、ファンタジーもホラーも、なんと戯曲や落語まで。ありきたりな比喩をつかえば、まるで女の子のおもちゃ箱のようだ。雑多で可愛いものが多いけど、時々残酷な仕打ちで放りなげられる。でも女の良いところ、悪いところを惜しげもなく晒している。
 自分を何と呼ぼうか一人称の使い方に悩んでいる少女。人魚に変身していく友達。御殿の召使とお嬢様の成れの果て。セックスできない恋人同士。「和合」の貼り紙があるゴミ屋敷に魅かれるOL。小説を書くために水商売に入った19歳。
 どの物語も先が見えず、意外な結末を迎える。唖然とした気持ちを抱えたまま、次の物語に突入し、また意外な結末に驚かされ、とこの繰り返しが延々と続く。
 演歌の大歌手と付き人の話に泣かされ、手作りの靴工房で働く女の子に憧れる。灰になるまでセックスしたいと願う女性が目指すその先に希望を見出す。
 どの小説も「もう少し先が読みたいのに」と思わせる手腕がすごい。生々しいセックス描写はないのにエロく、ゲロやらクソやら連発するのに汚くない。
 電車の女性専用車両が必要になる世の中も嫌だったけど、それを男性差別だと言って抗議する男たちには反吐が出る。妊娠や出産を素直に喜べない社会がまともなはずがない。
 どの小説が好みか共感するかはひとそれぞれ。次の作品が本当に楽しみだ。

光文社 小説宝石
2018年4月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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