『原発事故と「食」』
書籍情報:openBD
よくぞ書いてくれた
[レビュアー] 図書新聞
よくぞ書いてくれた。本書を読了後、まず出てきた思いである。本書は、社会学者の著者が、その専門のみに閉じこもることなく、多くの調査データをもとに、3・11以後の「食」の問題を扱う。内容は多岐にわたるが、キモとなるのはいわゆる「風評」と、差別を論じた部分だろう。また、いわゆる「ゼロベクレル派」は、本書を快く思わないかもしれない。しかし、本書オビに「不毛な対立を乗り越えるために」とあるが、著者の「現場」からの思考を織り込んだ本書は一読に値することを保証したい。いまだ、福島第一原発の廃炉への道は遠い。しかし、これも本書オビにあるように、「震災から7年 今なお問題をこじらせるものは何」なのか。一度立ち止まって考えてみたい。七年前はまだ幼かった、いまの大学生くらいの人たちにもぜひ手に取ってほしい一冊だ。(2・25刊、二二二頁・本体八二〇円・中公新書)