「転職できる状態」のために知識や情報よりも「思考法」

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このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む転職の思考法

『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む転職の思考法』

著者
北野 唯我 [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784478105559
発売日
2018/06/22
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「転職できる状態」のために知識や情報よりも「思考法」

[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)

「終身雇用」が崩壊し、二人に一人が一度は転職をする時代を迎えている。しかしいまだに転職の話題はタブー視される風潮がある。誰にも転職の悩みを相談できず、一人で悩んでいる人も多いのだろう。そんなニーズを受けてか『転職の思考法』の売れ行きが好調だ。Amazonの転職よみもののカテゴリーで1位を獲得し、発売2カ月で8万部を突破している。誰にとっても最初の転職は怖いものだ。その初めの一歩を踏み出す際の不安や葛藤を、本書は物語を読むことで解決してくれる。

 本書の中で一番衝撃的なのは、普通の転職エージェントに登録しても「自分にピタッと合う会社」は絶対に教えてくれない、という話だ。転職エージェントのビジネスモデル上、短期的な視点でしか物事を見ておらず、1秒でも早く「企業との面接」を勧めてくる傾向にあるという。この本では転職を長期的な視点でとらえ、すべての人が「いつでも転職できる状態」を作ることを目指している。そのために必要なのは知識や情報ではなく、どう選べばいいかの判断基準、つまり「思考法」だというのだ。

 まずはマーケットバリューを知ることからはじまる。マーケットバリューは技術資産、人的資産、業界の生産性の三つの要素で構成されている。技術や経験というのは個人の力によるところが大きい。どちらも持たない多くの人にとって重要なのは、どの場所にいるかだ。選択肢としては生産性が既に高い産業か、エスカレーターが上を向いている産業を選ぶべきだという。絶対にダメなのは衰退産業で働くことだ。また会社を選ぶときにはマーケットバリューに加え、働きやすさ、活躍の可能性を考慮すべきだろう。中途を活かすカルチャーはあるか? 自分の職種が会社の強みと一致しているか?も確認すべきポイントである。

 転職とは人に次のチャンスを与えるものだ。今の会社で活躍できなかったとしても、違う場所で輝ける可能性がある人は本当にたくさんいると著者はいう。「いつでも転職できる」というカードを手にすることで、今の職場でもより活躍できる人材になれるのではないだろうか。

新潮社 週刊新潮
2018年9月6日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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