天皇陵古墳を歩く 今尾文昭著

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天皇陵古墳を歩く

『天皇陵古墳を歩く』

著者
今尾文昭 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784022630780
発売日
2018/10/10
価格
1,870円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

天皇陵古墳を歩く 今尾文昭著

[レビュアー] スソアキコ(帽子作家、イラストレーター)

◆閉ざされた歴史遺産の未来は

 十一月下旬、堺市と宮内庁が『大山(だいせん)古墳(現・仁徳(にんとく)天皇陵)』の堤で発掘調査をし、埴輪(はにわ)列と石敷きが確認された。日本最大の古墳として有名だが、立ち入りを制限されてきたため、解明されていないことが多い。今回初の共同調査と研究者への公開は、新しい展開の始まりとなるのだろうか。

 古墳は被葬者が判明することがほとんどない。墓碑などがなく、名前を記されることがないからだ。皇族の墓地である陵墓も同様なので、研究者は地元に伝わる呼称を優先的に使い、陵墓名は併記という扱いが多い。

 本書の序章で、天皇陵とは何か、どのような理由と経緯により宮内庁に治定(じじょう)(陵墓に決定すること)されたのかがよく解(わか)る。また近年、学会関係者が厳しい制限付きで「立ち入り観察」できるようになったこと、今後の課題や問題点も整理されている。

 それを念頭におきながら、本章では実際に奈良・大阪の天皇陵古墳を見て歩く。まず最初は日本で一番古い前方後円墳の箸墓(はしはか)古墳から。古墳の形・構造、埴輪の時代変化などが一般者向けに丁寧に書かれていて理解しやすい。著者が特別に立ち入りを許可された時の描写もある。実測や発掘なしの「観察」でも、幾分かの成果が得られている。

 取り上げられる天皇陵古墳は五十基近く。上空からの写真、江戸・明治時代の絵図、町の記録・歴史書などの資料が添付され、考古学・歴史学の研究成果から築造期を推測し、陵名の治定の正否を問うている。どの古墳も、築造された後、周囲の人々の暮らしの中にあり、姿形を変えながら歴史を刻んできたのだ。だが今の陵墓は柵によって遠く隔てられ、「静謐(せいひつ)」は保たれているが、共にあるものとは受け止めにくい。

 著者が問いかけているように“閉ざされた歴史遺産としてある天皇陵古墳がこの先どうあるべきなのか、知恵を出し合う時に来ているのだ”。そのためには、研究者たちの成果を理解し、私たちも自分の目で見て歩くことが、その一歩となるのだろう。

 (朝日新聞出版・1836円)

 1955年生まれ。関西大非常勤講師。著書『古墳文化の成立と社会』など。

◆もう1冊

 スソアキコ著『スソアキコのひとり古墳部』(イースト・プレス)。コミックエッセー。

中日新聞 東京新聞
2018年12月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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