『いい人財が集まる会社の採用の思考法』
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転職で要注意。採用がうまくいかない会社に共通する「最悪な勘違い」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
世の中には「採用がうまくいっている会社」と「採用がうまくいっていない会社」がありますが、『いい人財が集まる会社の採用の思考法』(酒井利昌 著、坂本光司 監修、フォレスト出版)の著者によれば、後者には共通点があるのだそうです。
それは、「採用活動を一所懸命にやっていない」ということ。
「一所懸命」という言葉は、鎌倉時代の頃の武士たちが先祖代々伝わっている土地など(所領)を命懸けで守ったことに由来しています。
まさに「命懸け」で採用に取り組む。 人はこれを実践している会社に惹かれ、事実、優秀な人材ほど、そういった会社に集まっているのです。(「はじめに」より)
ちなみに著者は、企業の現場に入り、目標を達成させるコンサルタント。
所属している株式会社アタックス・セールス・アソシエイツは、「世界一の営業支援の会社を目指す」という理念を掲げ、クライアント企業の目標を達成させるために営業コンサルティング事業を展開しているのだといいます。
そこで本書では、採用のやり方を改善するために必要なエッセンスを凝縮しているというのです。
きょうはそのなかから、採用がうまくいっていない会社が陥りがちな勘違いを指摘した第1章「採用をなめてはいけない」に焦点を当ててみたいと思います。
いい採用ができない会社に共通する「最悪の勘違い」
「自社の採用がうまくいっていない理由はなんですか?」と聞かれたとしたら、はたしてどう答えるでしょうか?
「少子化だから」
「売り手市場だから」
「中小企業だから」
「不人気業界だから」
「給料が安いから」
「立地が悪いから」
(33~34ページより)
もしも上記のようなことを少しでも考えているとしたら、それは結果を出せていない会社の典型的な思考だと著者は指摘しています。
なぜなら、
同じ売り手市場において、採用がうまくいっている会社もあるのですから。 同規模の中小企業でも、採用がうまくいっている会社もあるのですから。 同業界の企業でも、採用がうまくいっている会社もあるのですから。 同条件の企業でも、採用がうまくいっている会社もあるのですから。 (34ページより)
つまり、いい採用をするためには、「最悪の勘違い」から逃れなくてはならないということです。(28ページより)
採用も「始めが大事」
「始めが大事」ということばがありますが、企業の現場に入ってコンサルティングをしている著者は、大きく飛躍する企業は「始めが大事」を実践していると感じるのだそうです。
だとしたら、いったいどのように実践しているのでしょうか?
重要なポイントは、「始め」とは「起点」であるということ。そのことを踏まえたいうえで、「入社後の社員教育は、起点といえるのか?」「プロジェクトの目的共有は、起点といえるのか?」を考えるべきだというのです。
大きく飛躍する企業ほど、「始めが大事」と捉え、実践していることがあります。 そう、それが「採用」です。 「自社には、どのような人財が本当に必要なのか?」 「そのような人財に入社してもらうには、どのようなプロセスが最適なのか?」 (38~39ページより)
企業は存続していかなければならないもの。そこで、「始めが大事」だと考えるべきだというのです。
逆にいえば、大きく飛躍する企業は、そのことをわかっているからこそ採用に力を入れているわけです。「採用のあり方」「やり方」を真剣に考え、常に環境に合わせて実践しつづけているということ。(35ページより)
採用は「点」でなく、「線」と「面」で考える
「採用がボトルネックになり、事業展開にブレーキがかかっている」というジレンマと、「逆に採用の課題さえクリアすれば、未来が拓ける」という希望とは交錯するもの。
ただし、採用は「“いま”という『点』で考えると失敗するそう。
採用は必ず、「“いま”から未来へと続く『線』で考えなければならないというのです。なぜなら、事業は「点」ではなく「線」だから。そして、組織に「面」で影響が出るのが採用。
もちろん、よい影響もあれば、悪い影響もあるでしょう。悪い影響の場合、組織に対して非常に大きなストレスを与えることになります。
それは、採用さえしなければ存在しなかったストレスです。
資源が限られている以上、かけるべきコストは分配しなければなりません。時間、費用、人的労力は、プラスのリターンを生み出すためのコストであるべき。
採用を失敗した場合には、時間も費用も人的労力も、コストとして本来かけるべき方向に費やすことができないわけです。
それは、本来得られるはずだったリターンを奪われることになるということ。
しかし、採用活動の場合はそうはなりません。たとえば、「今回のAさんの採用、ダメだったね」と済ますわけにはいかない話だということです。
ましてや、ダメだったからと簡単に辞めさせることもできません。
そして、もし採用を間違えると、「点」だけでなく、「線」だけでもなく、「面」の単位で組織に大きな影響が出てしまうことになると著者はいうのです。(47ページより)
著者は本書において、あえて「人材」ではなく「人財」と表記しています。企業にとって社員とは、財産のように重要な存在であるという意味が込められているのだそうです。
たしかに、「財産となる人」の価値を自社でどう最大化できるかが、企業にとっての重要なテーマなのではないでしょうか?
Photo: 印南敦史
Source: フォレスト出版