『どうぞ愛をお叫びください』
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【『どうぞ愛をお叫びください』刊行記念対談】ナポリの男たち×武田綾乃/ゲーム実況への愛をお叫びください!
[文] 新潮社
10代の自分に助けられている
蘭たん 僕らからしたら、作家さんのお仕事こそすごいなあと思います。文字だけで何百ページもある本を生み出して。
hacchi 客観性の塊だもんね、本って。
shu3 しかも、生み出してから受け手に渡って反響が返ってくるまでに長いスパンがかかりますよね。モチベーションを保つのが大変そうだなと思います。
武田 現代に向いてない仕事だなとは思いますね(笑)。それこそ、ゲーム実況を見ながら書いたりしています。
shu3 武田さんは、ゲーム自体、お好きなんですか?
武田 はい。もともとゲームが好きで、それでゲーム実況を見始めて、という感じです。
shu3 作中に出てくるゲームも幅広いですよね。
蘭たん 「Hearts of Iron」とか、「Civilization」とか、「オーバーウォッチ」(※)とか……。
※「Hearts of Iron」……第二次世界大戦をテーマとするPCの歴史シミュレーションゲーム。
※「Civilization」……人類文明の歴史と発展をテーマにしたターン制のストラテジーゲーム。
※「オーバーウォッチ」……未来の地球を舞台に様々な特殊能力を持つヒーローとなり、6人のチームで対戦するアクションシューティングゲーム。
武田 好きなゲームを並べました(笑)。
hacchi どれも実際にプレイされたゲームなんですか?
武田 ほとんどはそうです。ただ、作中の4人は現代の高校生なので、その世代がやっているゲームを調べたり、あとはちょっとマイナーなものもわざと入れたりしましたね。
すぎる そういえば、松尾君は「Civilization」とかが好きだと言ってましたが、実況ではそういうゲームを選ばずに、だいたいパーティーゲームを選んでるのはなぜなんですか?
武田 最初に、それぞれのキャラクターごとに「好きなゲーム」を決めてまして、それは性格と呼応させています。松尾はすごく分析力がある男の子なので、自分の好きなゲームはあまり実況に向いていないと思ったのかな、と。男子高校生4人が集まってまじめに「Hearts of Iron」をやるのは、あんまりウケないかなって思ったんじゃないですかね。
四人 ああー。
蘭たん 高校生でそれがわかるのがすごい。
hacchi さすが松尾君!
蘭たん 書く時にもとになる部分って、過去に自分が見聞きしたものだったりするんでしょうか。
武田 そうですね、今回の小説もそうですが、やっぱり自分が好きなものの方が、書いていて楽しいので。
蘭たん 僕は最近、10代の頃の自分にめっちゃ助けられてるなあと思うことが増えました。当時、好きだった漫画とか、ゲームとか、テレビ番組とか。だから、今興味を持ってるものが、向こう10年の自分を作るのかなって考えることがあります。
shu3 最近、映画とか漫画とかよく見てるのもそれでですか?
蘭たん それは単に暇つぶし……。
一同 (笑)
shu3 でも、そんなもんですよね。
蘭たん 10代のとき、この先の自分のためだなんて思って見てないからね。
hacchi すごいわかるなあ。10代のときに何を面白いと思ったかで、人生は変わると思う。
武田 そういう感性って、未成年の時に固まる気はしますよね。
蘭たん ただ、僕らが10代のときに面白いと思ってたものが今は面白いものじゃなくなってたりするし、価値観はアップデートしてかなきゃいけないなあとは思いますけどね。
武田 ナポリの男たちさんって、そのバランス感覚もしっかりされていますよね。昔から好きだった人が時代に合わない物言いをしていると悲しくなるのですが、皆さんの動画はいつも全力で好きでいられる。それが本当にありがたいです。
蘭たん こちらこそ、そう思ってもらえてるのはありがたいです。今ってそういう感覚がすごい重視される時代だと思っているので……。今、破天荒な方向で成功できる人は本当に一握りだと感じます。
すぎる そういう方向やと、カルト的な人気になる感じやな。
蘭たん 何年か前はむしろ、破天荒なことをする人のほうが評価されてましたけど。
hacchi それは社会全体の傾向とも連動してそうですよね。お笑い番組が減って教養系の番組のほうが多くなった、みたいな。
shu3 価値観の根っこの部分は変わらなくても、見せ方の部分をきちんと更新できていればなんとかなるのかなーと思います。
すぎる たしかに。ええこと言うわー。