体と心を整える「ファイトネス」に基づいた5つの動き・エクササイズ法
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『ビジネスエリートがやっているファイトネス 〜体と心を一気に整える方法』(大山峻護 著、あさ出版)の著者は、柔道家からプロ格闘家に転身し、アメリカのキングオブザケージでマイク・ボークを右ストレート一撃17秒で倒すなどの実績を打ち立ててきた人物。
現在は企業研修トレーナーとして、日本で初めて格闘技を応用した「ファイトネス」という研修プログラムを利用したチームビルディング、メンタルタフネスの企業研修を実施しているそうです。
「ファイトネス」は一見するとただのエクササイズのように見えるかもしれませんが、実は体を動かしながら、「自分とのコミュニケーションを取ること」を大切にしています。
実際に研修プログラムを受けていただくとわかるのですが、わたしは常に「自分にプラスのストロークを与えましょう」「自分の素直な感情を受け止めてください」「自分が何を感じているかを感じてください」と、受講している方々に対して、自分との対話を促します。
なぜなら、自分とのコミュニケーションがうまくできている人は、他者とのコミュニケーションもうまくできる人だと考えているからです。(25ページより)
そこで本書では「ファイトネス」をもとに、心と体を元気にする術、前向きに最高のパフォーマンスを発揮する術を紹介しているわけです。
きょうは第2章「体の動きで心を強くする」のなかから、2つの「心を軽くする動き」と3つの「基本エクササイズ」を抜き出してみたいと思います。
心を軽くする動き:大股で歩く
心を軽くするためには、まず自分自身が「自信に満ちあふれた人になりたい」と思うことが大切だといいます。
さらに、次にすべきは自信に満ちあふれた自分を演じること。具体的には、大股で歩くように心がけるだけでOK。
歩くときのポイントは、背筋を伸ばし、歩幅を大きく取って、かかとから着地すること。
これさえできていれば体を大きく使うことができるため、自信に満ち溢れている印象を与えることができます。簡単ですよね。
しかも、大殿筋というお尻の筋肉を使うことができるので、ヒップアップまでできてしまうというオマケつき。きっといままでよりも若々しい印象を持ってもらえるようになるでしょう。(58〜59ページより)
また、下半身の筋肉を使うと、筋肉を若返らせ、血糖値の低下、脂肪の分解が促され、若返りに効果があるマイオカインというホルモンが分泌されるのだとか。
つまり大股で歩くことは、いいことだらけだということです。(58ページより)
心を軽くする動き:上を見上げて口角を上げる
著者が現役時代から行なっているルーティンのひとつが、「口角を上げる」こと。いまでも、よい結果を出したいときは口角を上げるように心がけているそうです。
ポイントは、口角を上げると同時に、上を見上げながら両手を広げ、さらに「予祝」をすることだそう。
「予祝」とは、楽しい未来を頭のなかで想像し、予(あらかじ)め祝ってしまうこと。このルーティンを行うと緊張がほぐれ、とても前向きな気分になれるといいます。(60ページより)
基本エクササイズ:胸に効かせる腕立て伏せ
おなじみの腕立て伏せに関しては、まず目的を知ってもらいたいと著者は記しています。腕立て伏せで強化したいのは、胸の筋肉(大胸筋)。
そのため、大胸筋をしっかり意識しながら大きく収縮させ、なによりも「大胸筋に効いている」ことを感じるのが大切だというのです。
そこでポイントとなるのが、手を置く位置。これを誤ると違う筋肉(主に上腕三頭筋)へ負荷が分散してしまうため、ラクなトレーニングになってしまいます。
人間は無意識に辛いことを避けようとするので、体の使い方が上手な人ほど、体全体で腕立て伏せを行ってしまい、結果的には、回数に目的意識がむかいがちです。(66ページより)
筋トレもビジネスと同じで、目的を見失わないことが重要だと著者。
しかも正しいやり方で腕立て伏せを行えば、人によってはたったの5回でも十分な効果が得られるのだそうです。いいかえれば、決して「回数の問題ではない」ということです。(66ページより)
基本エクササイズ:腕立て伏せの効果を高める合掌ポーズ
上記にもあるように、人の体は無意識につらいことを避けてしまいがち。そこで、ここでは強制的に負荷をかけ、腕立て伏せの効率を高めるテクニックが紹介されています。
筋トレには「事前疲労法」というテクニックがあります。
これは、ターゲットにした筋肉のみを使う運動を行うことにより、あらかじめ事前に鍛えたい筋肉を疲労させておくという方法です。腕立て伏せは大胸筋を強化するエクササイズですので、そこを事前に疲労させておきます。
以下のようにいたって簡単なので、時間がないビジネスパーソンにはぴったり。
短時間で効率的に腕立て伏せの効果を高めたいなら、事前にこの「合掌ポーズ」を取り入れるといいそうです。(68ページより)
基本エクササイズ:お腹をギュッと縮めて腹筋
ご存知のとおり、「腹筋」は腕立て伏せと並ぶ筋トレの代表格。
しかし腕立て伏せと同様に、正しいやり方で行っている人は少ないと著者は指摘しています。でも正しくは、2つのポイントを押さえるだけ。とてもシンプルです。
一つ目のポイントは、上体を引き上げたときにあります。
体を引き上げると腹筋はギュッと縮まりますが、そこでしっかりと止まるようにしてください。
そして2つ目のポイントは、筋肉を途中で緩めず、ゆっくりと元の体制に戻ること。筋肉に負荷を与え続けるためには、筋肉の緊張を保ち続けることが大切なのです。(70ページより)
この2つのポイントをしっかり押さえていれば、たった5回の腹筋でも絶大な効果が望めるというのです。(70ページより)
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このように、すぐに取り入れられるエクササイズやメソッド満載。本書を参考にしながら、体と心を効率的に整えてみてはいかがでしょうか?
Source: あさ出版
Photo: 印南敦史