足りないのは「脱力」だった!無意識の緊張をほぐし体と心の健康を取り戻すヒント

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「脱力」はなぜ体にいいのか

『「脱力」はなぜ体にいいのか』

著者
鈴木亮司 [著]
出版社
青春出版社
ジャンル
芸術・生活/体育・スポーツ
ISBN
9784413212038
発売日
2023/08/18
価格
1,254円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

足りないのは「脱力」だった!無意識の緊張をほぐし体と心の健康を取り戻すヒント

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

現代人にとって、腰痛や肩こりなどの痛み、疲れ、不眠、気分の落ち込みなどの不調は大きな悩み。そのため改善を目指し、多くの方が整体に通ったり、筋トレやジョギングをしたり、病院に行ったりするわけです。

でも、その結果、本当に調子はよくなったでしょうか?

おそらく、あまり変わらないと感じている方が多いのではないか。『「脱力」はなぜ体にいいのか』(鈴木亮司 著、青春新書プレイブックス)の著者は、そう指摘しています。

なぜなら、そうした不調の原因の多くは、筋肉や骨格の問題でも、単なる運動不足でもなく、「気づかない緊張」にあるから。

実は現代人は、ほとんどの人が無意識に体のどこかを力ませて暮らしているため、どうしても不調が発生してしまうのです。(「はじめに」より)

いうまでもなく現代人が緊張しているのは、仕事や人間関係などのストレス、大量に浴び続けている照明、運動不足、パソコンやスマホなどの影響。たとえ自覚していなくても、誰もがストレスを受け、体を力ませているわけです。

そうした無駄な力みは、痛みやコリの原因となるばかりか、自律神経を乱し、睡眠や精神状態にも悪影響を及ぼします。血流が悪くなり新陳代謝を妨げ、疲れや病気の原因にもなっているのです。(「はじめに」より)

そこで本書では、私たちが力んでしまう理由と、脱力すれば体と心にどれほどよい効果があるのかを解説したうえで、「自然と緊張がとれていく体操」を紹介しているのです。きょうはそのなかから、第1章「体と心の健康には、『脱力』が必要です」に焦点を当ててみましょう。

自分では気づいていない緊張とは?

脱力するためにまず重要なことは、自分の体に力が入っているのを自覚すること。首コリや肩コリなどがある場合には、緊張に気づきやすいかもしれません。しかしその他の部分については、自分が緊張していること、力んでいることに気づいていない人がとても多いというのです。

マッサージなどを受けるとき、どこにも力が入っていないはずなのに、「肩に力が入っていますね」とか、「腰が緊張していますね」などと指摘されることがあるもの。また、美容院でシャンプーしてもらうとき、自分は力を入れていないつもりなのに「力を抜いてください」といわれ、緊張していたことに気づいたりしたこともあるのではないでしょうか?

つまりはそれほど、力みは無自覚なものだということです。

ところで、「アウターマッスル」と「インナーマッスル」ということばを耳にしたことがあるのではないかと思います。アウターマッスルは体の表面を覆っている筋肉で、インナーマッスルは体の内側にある筋肉。無意識の力みは、おもにアウターマッスルに生じているのだといいます。

アウターマッスルは主に体を動かすときに使われる、瞬発力を発揮する筋肉で、インナーマッスルは主に体を支えるのに使われる、持久力がある筋肉です。

姿勢が崩れ、インナーマッスルがちゃんと仕事をしなくなると、アウターマッスルがインナーマッスルの代わりをしなければならなくなり、アウターマッスルに力みが生まれるのです。(25ページより)

もともとアウターマッスルにはインナーマッスルのような持久力がないため、体を支えていると無意識に力んでしまうというわけです。(24ページより)

前屈と後屈で体が緊張しているかどうかを確認できる

体がどれだけの緊張状態にあるかを正確に確認することはできないものの、ひとつの目安として、前屈と後屈をしてみるとある程度の判断は可能であるようです。

前屈をしてみて、おおよそ手の指が全部つくぐらいまで曲がる人は、緊張状態はそこまで深刻ではないと考えられます。

後屈は腰を痛めやすく、自分ではわかりづらいので目安はあげられませんが、両手を腰に当てて上半身を後ろに反らせようとしたとき、ほとんどできない人は緊張状態が進んでいると考えて間違いないでしょう。

前屈が問題なくても、後屈がまったくできない人もいて、こういう人もどこかに力みが入っている可能性が大きいです。(30〜31ページより)

体の柔らかさには骨格も関係していますが、基本的に体が柔軟な人は緊張の度合いは低く、硬い人は緊張の度合いが高いといえるそう。

ただし体が硬いというのは、筋肉の問題ではないようです。体が硬い人は緊張によって体の可動域が狭くなっているため、それ以上動かすなと脳がストッパーをかけているというのです。つまり重要なのは、筋肉そのものの硬さではなく、脱力することだというわけです。(30ページより)

脱力するには、吐く呼吸を意識することが大切

ここで著者は、脱力するために重要な呼吸のポイントを2つ紹介しています。それは、呼吸を鼻で行うことと、吐く息を意識すること。

まず、鼻で呼吸すると鼻腔で一酸化窒素が出て血管が拡張します。その結果、血の巡りが良くなり、酸素が体中に行き渡りやすくなります。

そして、5秒で吸って10秒で吐くなど、吐く呼吸を長くするように意識してみてください。

長くゆっくり吐くと、横隔膜が大きく動くことで副交感神経が亢進され、リラックス効果を生むのです。もちろん、脱力効果もあります。特に首と肩は横隔膜と関わりが深いため、首コリ、肩コリの人は、特に吐く呼吸をしてみるとよいでしょう。(41ページより)

でも、私たちは吸うことによって酸素を取り入れているのに、なぜ吐く息が大切なのでしょうか? 著者によればそれは、二酸化炭素が体内で重要な働きをしているから。私たちの体内では、赤血球のなかにあるヘモグロビンが体中の細胞に酸素を運んでいますが、その際、二酸化炭素が必ず必要になるというのです。

私たちの体の細胞をひとつひとつの家にたとえると、その中にはエネルギーを作り出すミトコンドリアが住んでいます。ヘモグロビンが宅配便のように酸素を運んできたとき、それを受け取るのに必要なのが二酸化炭素です。二酸化炭素が少ないと、せっかく酸素が運ばれてきても、ヘモグロビンはちゃんと酸素を渡さずに帰ってしまうのです。(42〜43ページより)

二酸化炭素によってヘモグロビンから酸素を切り離す現象を「ボーア効果」と呼ぶそう。酸素を吸ってばかりいると過呼吸になって苦しくなりますが、それは体内の二酸化炭素濃度が低くなることによって、末梢では酸欠になりやすいからだというのです。

体の隅々まで酸素が行き渡れば、ミトコンドリアはATP生産といって、アデノシン3リン酸というエネルギーを作り出します。我々は筋肉の伸縮をすべてATPで行っているので、ATPがなければ私たちの体はまったく動かなくなってしまいます。(42ページより)

つまり私たちは、吐くことによってリラックス効果を得ているだけでなく、全身を動かすエネルギーをもしっかり生み出しているようです。(41ページより)

以後の章では、著者がすすめる「脱力スワイショウ体操」「ボディマップ体操」が写真つきでわかりやすく解説されています。それら2種類の体操を組み合わせて行うことで脱力すれば、体も心もリラックスさせることができ、すぐに痛みと疲れをリセットできるのだとか。簡単なものばかりなので、試してみる価値は大いにありそうです。

Source: 青春新書プレイブックス

メディアジーン lifehacker
2023年10月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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