『人生脚本』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
似て非なるもの 伴一彦
[レビュアー] 伴一彦(脚本家)
脚本家としてデビューして今年で四十年。え? 四十年!? 自分で書いてビックリです。何本のドラマを書いたんだろう。連続ドラマを三十シリーズ以上、単発は……面倒臭いから数えませんが。
小説は数えられます。自分の連続ドラマのノベライズ、電話の会話だけの短編小説集、小学生向けの児童書、昨年九月に上梓(じょうし)した『追憶映画館 テアトル茜橋(あかねばし)の奇跡』(PHP文芸文庫)。
そして、この『人生脚本』。
書き下ろしは実に二十五年ぶりです。
書き慣れた脚本と小説の違いに正直苦労しました。
映像作品になって初めて完結する脚本と、それ自体が完成品の小説。脚本で重要視されるのはセリフですが、小説は地の文。その地の文もト書きとは似て非なるもの。同じ食材(題材)でも料理方法が違います。
何より大変だったのは枚数。一時間ドラマ八本分くらいの分量を書かなければならなかったことです。
また、脚本はプロデューサーやディレクターとの共同作業、小説は自分一人の孤独な作業……と思っていたのですが、編集者(鈴木一人さん)とキャッチボールしながら楽しく書けました。
『人生脚本』は途中まではイヤミスかと思う方がいるかもしれませんが、安心して下さい。でも、シリアスではあります。
大学で同じゼミ生だった男女三人の物語。二人は結婚し、もう一人の男は親友として傍(そば)にいます。二人の一人息子が事故死したことから結婚生活に軋(きし)みが生じ、やがて悲劇的な出来事が起きます。
シェイクスピアの戯曲の数々(特に『マクベス』)、1950年公開の映画『旅愁』などに触発されて書きました。
人は誰かが書いた脚本通りに生きるしかないのだろうか?
是非お読み下さい。