『会いたくて会いたくて』
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なぜ会っちゃいけないのか 子どもに大人の事情はわからない
[レビュアー] 立川談四楼(落語家)
会いたい人になかなか会えない。盆や正月に郷里へ行くのも憚られる。祝い事はもちろん、葬儀にも人数制限がかかる。大人は事情を飲み込んでも、子どもにはなぜそうなるのかが理解できない。
そんな子どもが主人公の絵本です。作家でもある女優と、絵本画家がタッグを組み、おばあちゃんに会いたくてたまらない子どもの心理を見事な一冊にしました。
ランドセルを背負っている男の子は小学校低学年、おそらく1年生でしょう。老人ホームにいるおばあちゃんに会いたいのですが、ママから「しばらく行っちゃダメ!」と言われます。
でも会いたい一心でホームを訪ねます。玄関のドアは閉まっていて「ブザーを何どもおしたら中から人が出てきて、『ゴメンネ、今はお見まいできないの』って言われた」となります。
ご安心ください。男の子はおばあちゃんに会えます。懐かしい糸電話という形でです。男の子にはそれがとても新鮮で、男の子は会えないことはとても意義のあることだとおばあちゃんから教わります。そしてその帰りがけ、男の子にラッキーなことが待ち受けています……。
新型コロナウイルスを示唆する言葉や絵はどこにも出てきませんが、主人公の男の子は大きなものを授かります。本欄読者の中には、子や孫に会えないという人も多いのではないでしょうか。そんな人たちにはまさにうってつけの一冊です。電話やテレビ電話での読み聞かせ、あるいは一筆添えて贈るのはいかがでしょう。
本書のコンビに岡淳さん、大友剛さんを加え「しげちゃん一座」を結成。以来、全国各地、津々浦々で絵本ライブを開催中とありますが、コロナ禍でおそらく活動は止まっているでしょう。我らの落語会もよくて延期で、そのほとんどが中止なのですから。『会いたくて会いたくて』、本当にいいタイトルだと思います。会いたいですものね。