アマゾンがイノベーションと収益拡大を両立できるのはなぜか?

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アマゾン式 変わり続ける力

『アマゾン式 変わり続ける力』

著者
佐藤 将之 [著]
出版社
大和書房
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784479797395
発売日
2021/02/20
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

アマゾンがイノベーションと収益拡大を両立できるのはなぜか?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

アマゾン式 変わり続ける力』(佐藤将之 著、大和書房)というタイトルにある「変わり続ける力」とは、著者によれば「変わりながら収益を増大させていく力」

「変革=変化」と「収益の増大」は、普通に考えれば相反することばです。変化するための改革や設備投資に時間をお金をかければ、必然的にその間の利益は落ちることになるのですから。

しかしアマゾンは、新型コロナウイルスの世界的感染拡大の影響を受け、大半の企業が経済活動の停止・縮小を余儀なくされた2020年にあって、これら相反する2つを両立させたのです。

アマゾンジャパンの創業メンバーとして、その黎明期を目の当たりにしてきた著者は、そこにアマゾンの凄みがあると考えているそう。

そこで本書では、「アマゾンが変化と収益拡大を両立できる秘訣は、いったいどこにあるのか?」を解き明かしているわけです。

本書は、日頃から「会社を変えたい」と感じているものの、「いったい何をどう変えていけば良いのかわからない」という、悩める経営者やマネージャーに向けて書きました。(「プロローグ コロナ禍でも成長し続けるアマゾン」より)

根底にあるのは、世界が激変し、「自分たちが変わらなければもはや生き残れない」という現在の状況は、大きなチャンスでもあるという考え方。

第4章「変化を『習慣化』するための行動・思考」のなかから、「変化を促す3つの原動力 Listen, Invent, Personalize」に焦点を当ててみたいと思います。

理念を大切にするために必要な行動

アマゾンが、「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」というグローバル・ミッションのひとつとして掲げていることは有名。そして共同創業者のジェフ・ベゾスは、そうなるために3つのことを大事にしていると語っています。

それは、Listen(しっかりと聞く)、Invent(イノベーションを起こす)、Personalize(一人ひとりに最適化する)の3つ。それぞれを見ていきましょう。

1. Listen(しっかりと聞く)

お客様の声を聞くというのは、最も基本的かつ伝統的な手法。特段の新しさはありませんが、ジェフは「お客様のいうことを聞かなければfail(=失敗)する」という表現を用いて、「Listen(しっかりと聞く)」というファーストステップの重要性をことあるごとに説いているのだそうです。

ただし、「その声を商品やサービスに“額面どおりに”反映する」というわけではなく、「Listen(しっかりと聞く)」という行動には「Focus(的を絞る)」という行動も含む必要があるのだと著者は解釈しているといいます。

お客様の声を「Listen(しっかりと聞く)」したうえで、

「お客様が本当に望んでいることは何か?」

「その声をどんな方向性で解決することが望ましいのか?」

(156ページより)

を検討し、ある程度絞り込むプロセスも必要だということ。その検討プロセスをも含め、ジェフは「Listen(しっかり聞く)」を表現しているということです。(153ページより)

2. Invent(イノベーションを起こす)

お客様の声をしっかり聞き取ったうえで、本当に望まれていることを理解し、どのような方向性で解決すべきかを絞り込んだら、次は2つ目の「Invent(イノベーションを起こす)」へ。

なお「改善、改良」を意味する「Improve」ではなく、「創造、発明、イノベーション」などの意味を表す「Invent」を使っているのは、「いままでに存在しなかった新しいものを創造できないか?」という視点で考える習慣を身につけるため。

ちなみにアマゾンは、新しいサービスの開始に対して非常に慎重な企業でもあります。その理由は、「サービス開始後に問題や不具合が生じてしまうと、それを使ってくださったお客様を失望させることになるから」。そこでテストにテストを重ね、少しずつ規模を大きくしながらサービス開始を目指すということです。

サービス開始の告知が直前になったり、「気がついたら新サービスが始まっていた」というようなことが多いのも、「よし、これで完全に大丈夫だ」という手応えを社内で得て、初めて開始にGOを出すから。

当然ながら「同業他社が似たサービスを始めるかもしれないから、開始を急ごう」という判断も絶対にしないそう。

「Invent(イノベーションを起こす)」によって生まれたものが「お客様の期待に応えられるものであるか?」だけを見ているということです。(157ページより)

3. Personalize(一人ひとりに最適化する)

これは、「お客様ひとりひとりを世界の中心に置く/主役になっていただく」というイメージ。

アマゾンのサイトは日々刻々とアップデートを繰り返していますが、変化するにあたり、大きな指針として大事にしているのが「お客様に『自分のために変わってくれたのだ』と感じていただけるかどうか?」だというのです。

変えたことで「以前より使いにくくなったな」「以前のほうが買いやすかったな」などと思われてしまうのであれば、そのアップデートは失敗だということ。これはサイト画面に限らず、すべてのサービスにも同じことがいえるそうです。

Listen(しっかりと聞く)→Invent(イノベーションを起こす)→Personalize(一人ひとりに最適化する)

――アマゾンの社員として仕事をしていた頃は当たり前のように感じていたプロセスでしたが、アマゾンを離れた今、あらためてアマゾンが「変わり続ける」ための原動力になっているなと私は再確認しました。(160〜161ページより)

とてもシンプルではありますが、個人もチームも全力を出し切らないと、本質的な部分に到達できないのも事実。

しかも、しっかり3ステップにプロセス化されているので、すべての社員が日々の仕事のなかで自然と「変わり続ける」ことになるわけです。(159ページより)

当然ながら本書には、著者がアマゾンで得た知識や経験が凝縮されています。だからこそ、会社と自身の成長を実現させたいという意思を強く持つ方は必見。会社を変えるための、大きな力を得ることができるでしょう。

Source: 大和書房

メディアジーン lifehacker
2021年4月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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