世界を見る目が変わる! 宇宙物理学者が教える「科学の教養」

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世界が面白くなる!身の回りの科学

『世界が面白くなる!身の回りの科学』

著者
二間瀬敏史 [著]
出版社
あさ出版
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784866672823
発売日
2021/07/20
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

世界を見る目が変わる! 宇宙物理学者が教える「科学の教養」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

いうまでもなく私たちは、科学の恩恵にあずかりながら日常生活を送っています。

とはいえ、“科学が使われている物事の仕組み”をきっちり理解しているという方は限られているのではないでしょうか?

多くの方はとくに自覚することもなく毎日を過ごしているのでしょうし、科学について知らなかったとしても、生きていくうえで不都合が生じることはほとんどないのですから。

宇宙物理学者である『世界が面白くなる! 身の回りの科学』(二間瀬敏史 著、あさ出版)の著者も、まずは本書の冒頭でそのことを認めています。

たとえば、「なぜ、電子レンジは食べものを温められるのか?」「なぜ、カーナビが目的地に連れて行ってくれるのか?」などの仕組みを知らなかったとしても、なにも問題はないのだと。

ただ、「だから科学について知る必要がない」というわけでもないようです。

科学は私たちの身の回りにたくさん存在しており、生活を快適なものにしてくれているのです。

本書では、そんな身の回りにある科学についてお話するとともに、「相対性理論」や「シュレーディンガーの猫」、「超弦理論」など、難解とされている科学についても言及しています。(「はじめに」より)

つまり本書は、科学が好きな人はもちろんのこと、科学に苦手意識を持っている人でも抵抗なく楽しめるようにつくられているわけです。

きょうはChapter 3「身の回りにある科学の仕組みと不思議な科学」のなかから、上記の電子レンジについての疑問を含む「日常生活に欠かせない電化製品」に焦点を当ててみたいと思います。

食べものを温める電子レンジの仕組み

著者は科学について、「ある意味において“ものの考え方”ではあるものの、その一方で私たちの生活そのものを豊かにしてくれるものでもある」と記しています。

たとえば電磁波は家庭においても、スマートフォン、電子レンジ、IHクッキングヒーター(電磁調理器)などに使われています。とくに食べものを温めてくれる電子レンジは、電磁波だけでなく、物質が原子や分子からできていると言う知識がなければ生まれることはなかったのだとか。

では、そんな電子レンジの仕組みは、いったいどのようなものなのでしょうか?

ご存知のとおり、食品のなかには水分が含まれています。水は水分子(H2O)の集まり。1つの酸素原子(O)に2つの水素原子(H)がくっついた形になっていて、分子全体としては電荷(電気現象のもとになるもの)を持っていないのだそうです。

しかし細かく見ると、酸素はマイナス(-)に、水素はプラス(+)に帯電しているといいます。そこに電波が当たると、プラス電荷とマイナス電荷に力が働き、水分子が振動します。

ちなみに電子レンジに使われている電波は、2.4ギガヘルツ帯(1ギガヘルツは、1ヘルツの10億倍)。つまり、電気や磁気が強くなったり弱くなったりする振動が、1秒間に24億回起こっているということ。

この電波によって、食品のなかのすべての分子が、1秒間に24億回振動させられ、その影響で食品は熱くなるわけです。(124ページより)

やかんや鍋の水を沸騰させる電磁調理器

ところでオール電化が普及したこともあり、IHを使っている方も多いのではないかと思います。

IH本体(真ん中の円部分以外)は熱くならないにもかかわらず、鍋に入れた水を置くと沸騰します。それは、「電磁誘導(磁場が変化すると電流が流れる仕組み)」によるもの。

IHのIはinduction、Hはheatingの頭文字で、日本語では電磁誘導加熱と言います。

IHの丸いガラス盤の下にはぐるぐるに巻いてある銅線があり、そこに交流電流(流れる向きが周期的に変わる電流のこと。東日本では1秒間に50回、西日本では60回向きが変わる)を流すと、銅線の周りに変動する磁場が発生します。

すると、ガラス盤の上に置いた金属の鍋底に変動する磁場が当たるため、鍋には渦巻き状の誘導電流(電磁誘導によって発生した電流)が流れるという仕組みです。(126ページより)

調理器として実用化するためには、水を沸騰させるだけの強い火力、この場合であれば鍋底に強い誘導電流をつくらなければなりません。そのため、非常に速く振動する強い磁場、少なくとも1秒間に約2万回振動するような交流電流が必要になるのだといいます。

ところが一般の家庭に送られてくる交流電流は、50か60ヘルツ(1秒間に50回から60回の振動)なので、かつてはまったく不十分だったのでした。

しかも1970年台までは、50か60ヘルツの交流電流を高い振動数に変換する装置(インバーター)がなかったため、IH調理器は大きくて重たく、そして高価だったのです。

流れが変わったのは、その後の1990年代以降。技術発展に伴ってインバーターが開発されたことにより、一気に軽量化・低コストが進み、多くの家庭に行き渡るようになったわけです。(125ページより)

役に立たないように見えても、実は役立っていることが科学にはたくさんあるもの。

そこで、「多くの人に、科学について少しでも興味を持ってもらい、『科学とはなにか』を考えてもらいたい」という著者の思いに基づく本書を通じ、知識を深めてみてはいかがでしょうか?

Source: あさ出版

メディアジーン lifehacker
2021年7月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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