『開城賭博』
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私は短編が好きだ 山田正紀
[レビュアー] 山田正紀(作家)
短編を書くのが好きだ。
なぜなら、すぐに書き終わるから、と人に言い、エッセイにも書いたが、そしてそれは必ずしも嘘ではないのだが、書きおわったとき、まれに自分でもこれはまずまずの出来ではなかろうか、という手ごたえを得ることがある―総じて自信に欠ける私としては、これはじつにめずらしい感触であって、そのことがあるから短編を書くのはやめられない、好きだ、という気持ちにもなるのであろう。
今回の『開城賭博』は、最初、宮内悠介(みやうちゆうすけ)さんの「博奕(ばくち)のアンソロジー」に書かせていただいた短編をとっかかりにし、何本か、書かせていただいたものを―書き下ろしの中編一本を加えて―一冊にした。
べつだん、そんな注文があったわけではないのだが、最初に書いた「開城賭博」が幕末を舞台にした短編ということもあって、それ以外のものも―濃淡こそあるものの―歴史に材を取った作品になっている。それなりに作品のバラエティにも意をつくしたつもりであり、まずは楽しんでいただける内容になっているのではないか、と自惚れている。
これら以外にも、歴史に材を取った短編の腹案は何本かあるし、それ以外にもミステリー短編、SF短編もそれぞれに一冊分ぐらいのストックはある。そのほかにも、これはどういうジャンルに入れればいいのかわからない―強いて言えば「奇妙な味」ということになるのだろうか―短編の腹案も何作かある。いつか書きたい、書ければいいな、と思っている。
これはもちろん売り込みのつもりであり、もういい歳なのだから、こんなことを臆面もなしに書くのは、はしたない、という思いもあるにはあるのだが、どうしてか短編にかぎっては、あまり恥ずかしいという気がしない―これが要するに、短編が好き、ということなのだろう、と思う。