もし日常の中で、あなたもモンスターに出くわしたら……田丸雅智『おとぎカンパニー モンスター編』刊行記念エッセイ

エッセイ

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

おとぎカンパニー モンスター編

『おとぎカンパニー モンスター編』

著者
田丸, 雅智, 1987-
出版社
光文社
ISBN
9784334914387
価格
1,705円(税込)

書籍情報:openBD

もし日常の中で、あなたもモンスターに出くわしたら……田丸雅智『おとぎカンパニー モンスター編』刊行記念エッセイ

[レビュアー] 田丸雅智(ショートショート作家)

 二次創作をテーマにした『おとぎカンパニー』シリーズも、今回で第四弾を迎えた。これまで海外童話に日本昔ばなし、妖怪から二次創作を行ってきた中で、本書では広義の「モンスター」を元ネタに据えた。

 そのモンスターという言葉から、ぼくが真っ先に連想するのは冒険だ。それは多分に、ゲームソフトやカードゲームからの影響が大きい。ポケモンにドラクエ、マジック:ザ・ギャザリングなど、子供の頃は異世界の冒険に心躍らせ、さまざまなモンスターを倒したり、仲間にしたりしたものだ。そこに登場するのは作品オリジナルのモンスターだったが、中にはヴァンパイアやペガサスや龍など、有名なモンスターをアレンジしたものも少なくなかった。かつてのぼくはそのまねをして、自分でも有名なモンスターから二次創作的に新たなモンスターを考案して遊んでいたのを覚えている。

 本書で行った物語という形での二次創作も、そんな当時に通ずるものがあるのかもしれない。違っているのは、本書の二次創作ではいずれも現代の日本を舞台にしたという点だ。異世界で出くわすモンスターも最高だけれど、もし自分たちが生きるこの現代にも思わぬ形でモンスターが存在したら? そんなことを想像しながら、十の物語を執筆した。

 血液ではなく樹液を吸う、女子高生ヴァンパイア。競馬ならぬ「競天馬(けいてんば)」で、速さを競い合うペガサス。膝に溜まった「水」に棲みついた龍……。

 冒険というのは、ここではないどこか異世界でするもの、とは限らない。ぼくたちの日常も、その舞台に十分なり得る。いつもと同じ光景も少し視点を変えるだけで輝きはじめ、たちまち冒険が幕を開ける。

 その日常の中の冒険で、あなたもモンスターに出くわすことがあるかもしれない。そうなったときに慌てないよう。今のうちから、本書でしっかり心の備えをしてほしい。

光文社 小説宝石
2022年1・2月合併号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク