貧困と格差の拡大、人種、ジェンダー。英国社会を覆う諸問題に生活者の視点で鋭く切り込み、話題を呼んだ社会・政治時評『ヨーロッパ・コーリング』から5年。その後の時評を加えた改編増補版が本書である。
在英20年超のライターである著者は、怒りを武器にEU離脱やコロナ禍で右往左往する政治と社会も容赦なく描き出した。
2014~21年分を収録。時評は古びるのが宿命だが、本書にその兆候はみられない。生起する事象の本質をえぐり出しているからだろう。自身を叱咤(しった)し、病んだ社会と向き合う著者の姿に心打たれる。(岩波現代文庫・1265円)

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2021年12月26日 掲載
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